サマリー
◆2015年、60歳以上人口の約1%の人が他の市町村へと移住した。本稿では、高齢者の移住が注目される中で、実際に高齢者はどのような移住行動をとっているのか、その実態を探る。
◆高齢者は基本的に同一都道府県内への移住が多く、さらに、他の都道府県へ移住する場合には近隣の都市、あるいは都市近辺を好んで移住している傾向がある。
◆札幌市や福岡市の事例に見られるように、近隣の比較的小規模な市町村から都市への高齢者の転入が起こっている。東京都特別区部ほどの巨大都市からは高齢者の転出超過が起こっているものの、転出者の行き先としては近隣の人口15万人以上の都市が選ばれている。このことから言えるのは、高齢者は東京都特別区部ほどの巨大都市は好まないが、やはり、便利な都市を好むということである。
◆1941~45年生まれの人に関して、就学や就職を機に地方から大都市圏へ移住した人が、再び地方に戻ってくる地方回帰率は16%ほどであり、そのうち、定年退職後の地方回帰の動きは微々たるものであった。
◆高齢者にとっても、都市の魅力が高い可能性が考えられる。都市ならではの利便性に加え、都市で働く子ども・孫世帯と同居・あるいは近居することで子育てをサポートできることも魅力の1つであろう。近年、女性の就業率が上昇し、共働き世帯が増えていく中で、高齢者が都市から求められているという側面もあるのではないか。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
若者の奨学金返済の不安をどう解消するか
給付奨学金の拡充、貸与奨学金は有利子から無利子への流れを加速
2025年05月09日
-
大介護時代における企業の両立支援
〜人的資本のテーマは「介護」にシフト〜『大和総研調査季報』2025年春季号(Vol.58)掲載
2025年04月24日
-
2025年度の健康経営の注目点
ISO 25554の発行を受け、PDCAの実施が一段と重視される
2024年12月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日