労働市場から消えた25~44歳男性

地域間で広がる格差、抱える問題はそれぞれ異なる

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2016年04月08日

  • 山口 茜

サマリー

◆25~44歳女性就業率は、この30年間で上昇傾向が続いており、結婚や出産・育児期に女性の就業率が落ち込むM字カーブも大きく改善している。一方で、同年代の男性就業率は低下傾向にある。25~44歳男性就業率の都道府県別データを見てみると、この20年間で就業率が全国的に低下するとともに、地域格差が拡大していることが確認された。


◆この20年間で起きた就業率に関する変化は、前半10年と後半10年で異なる特徴を持っている。1992年~2002年は、25~44歳男性就業率が大幅に低下し、地域格差も拡大した10年間であった。その原因としては、バブル崩壊後の景気変動によって、仕事に就きたくても就けない人が増加したことが挙げられるだろう。一方、2002~2012年は、就業率の低下は小幅にとどまったものの、地域格差が拡大し続けた10年であった。地域格差が拡大した原因は、就業希望非求職者や、非就業希望者といった、いわゆる非労働力人口が大幅に増加した地域が存在したことにある。ゆえに、2002~2012年の10年間で拡大した地域格差は、非労働力人口を考慮に入れない完全失業率などの尺度では確認できない。


◆25~44歳男性就業率に関して、地域ごとに抱える問題は異なる。従って、25~44歳男性の就業率を上昇させるためには、全国で画一的な施策をとるよりも、地域ごとの実情に合わせた施策をとることが必要であろう。例えば、単に労働需要を増やすだけでは就業率を上昇させるのが難しい地域も存在する。そのような地域では、病気・けがを患っている人の多さ、就業未経験者の多さ、明確な阻害要因はないが就業を希望しない人の多さ、求職意欲喪失者の多さ、など様々な観点から現状を分析し、それぞれの地域が抱えている問題をしっかりと把握した上で、その問題に対処していくことが必要だ。


◆本稿では、25~44歳男性就業率が過去の水準まで上昇した時の試算も行った。1992年水準では80万人の就業者増、1.94兆~3.82兆円の所得増が見込まれる。また、2002年水準では22万人の就業者増、0.54兆~1.06兆円の所得増が見込まれる。

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