なぜマイナンバーがあるのに一律10万円給付に時間がかかるのか

マイナンバーと紐づけた「共通入出金口座」の事前登録が必要

RSS

2020年05月26日

サマリー

◆特別定額給付金の国内居住者1人当たり一律10万円給付に対しては、給付のための手続きが煩雑だ、給付が実際に行われるまでの期間が長い、との声も挙がっている。しかし、現状のしくみやマイナンバーカードの普及状況等を前提とすれば、そもそも簡素な手続きで迅速な給付を行うこと自体が困難であった。

◆危機の際に迅速な給付を行うためには、預金口座とマイナンバーを紐づけ、給付事務に活用する必要がある。そのためには、マイナンバーに紐づけた預金口座を1つ、市区町村との入出金用に事前登録するしくみをつくるとよいだろう。また、マイナンバーカードおよびオンラインでの税や社会保障の手続きの普及が進んでいない点も課題であり、利用促進のために電子申請を行った人にポイント還元等のメリットを与えることも考えられる。

◆今後も、大規模災害や経済・金融危機などの非常時に「国民への迅速な現金給付」が必要となる局面が想定される。また、平時であっても、マイナンバーと紐づけた口座が事前登録されていれば、税金の還付、公的年金・児童手当などの際の国民の手続きと行政の事務作業の負担を大幅に軽減することができる。平時・非常時ともに有効にマイナンバーを活用できるよう、制度改正が望まれる。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。