金融所得、税率引上げ検討?
金融所得税率引上げは、富裕層課税強化にみせかけた大衆増税
2018年03月02日
サマリー
◆金融所得税率の引上げが、平成31(2019)年度税制改正の議論で取り上げられるとの報道がなされている。実際に、2016年秋頃から、税制改正の議論の際に、引上げがテーマの一つとしてあげられていた。
◆引上げの論拠としては、年間所得1億円超の所得層において平均税率が低下していくことがあげられていたが、当該層の納税者に占める比率は0.04%にすぎず、現行制度が所得再分配機能を歪めているとは言い難い。
◆仮に金融所得税率を20%から25%に引き上げた場合、税収面では、富裕層よりも中堅以下の所得層の増税の効果の方がはるかに大きくなる。金融所得税率引上げは、富裕層の課税強化というよりは大衆増税の側面が強い。
◆他方で、超富裕層の場合は、例えばIPOに伴う創業者の株式売却益等が多いことが推察される。当該層の課税強化は創業意欲の減退やわが国よりも税負担が軽い周辺国への流出を招くおそれがある。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
2022年08月10日
アメリカ経済グラフポケット(2022年8月号)
2022年8月8日発表分までの主要経済指標
-
2022年08月09日
企業に求められる人的資本と企業戦略の紐づけ、および情報開示
有価証券報告書における情報開示は実質義務化?
-
2022年08月08日
非農業部門雇用者数は前月差+52.8万人
2022年7月米雇用統計:雇用環境は堅調、労働需給はタイトなまま
-
2022年08月05日
2022年6月消費統計
感染状況の落ち着きから、緩やかな回復基調を維持
-
2022年08月10日
多様化時代の金融サービス業のあり方
よく読まれているリサーチレポート
-
2022年07月20日
日本経済見通し:2022年7月
感染再拡大を踏まえGDP見通しを改訂/電力需給対策の効果は?
-
2022年07月20日
米国経済見通し 既に景気後退にあるのか
景気後退リスクが高まる「魔の6ヵ月」が控える
-
2022年05月25日
日本のインフレ展望と将来の財政リスク
コアCPI上昇率は2%程度をピークに1%弱へと低下していく見込み
-
2022年06月22日
日本経済見通し:2022年6月
物価高対策の在り方/「新しい資本主義実行計画」を読む
-
2022年06月22日
中国経済見通し:2022年下半期に本格回復へ
景気浮揚のための政策パッケージを発表