サマリー
◆金融所得税率の引上げが、平成31(2019)年度税制改正の議論で取り上げられるとの報道がなされている。実際に、2016年秋頃から、税制改正の議論の際に、引上げがテーマの一つとしてあげられていた。
◆引上げの論拠としては、年間所得1億円超の所得層において平均税率が低下していくことがあげられていたが、当該層の納税者に占める比率は0.04%にすぎず、現行制度が所得再分配機能を歪めているとは言い難い。
◆仮に金融所得税率を20%から25%に引き上げた場合、税収面では、富裕層よりも中堅以下の所得層の増税の効果の方がはるかに大きくなる。金融所得税率引上げは、富裕層の課税強化というよりは大衆増税の側面が強い。
◆他方で、超富裕層の場合は、例えばIPOに伴う創業者の株式売却益等が多いことが推察される。当該層の課税強化は創業意欲の減退やわが国よりも税負担が軽い周辺国への流出を招くおそれがある。
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