サマリー
◆2016年11月8日(米国時間)、米国で大統領選挙が行われ、共和党候補のドナルド・トランプ氏が勝利した。本稿では、トランプ氏のウェブサイトに示されていた所得税改革案をトランプ氏の案とみなして分析し、米国の改革の方向性および日本へのインプリケーションについて述べる。
◆トランプ氏の税制改革案を概観すると、最高税率の引き下げ(39.6%→33%)を伴うブラケットの削減(7段階→3段階)と所得控除の拡大(基礎控除の拡大など)の両面により、所得税の持つ所得再分配機能を弱めるものである可能性が高そうである。
◆これらの税制改革の方向性は、日本における近年の税制改革とは逆の方向を向いている。米国の税制は日本の税制改革を行う際の論拠の一つとなりがちであることを考えると、今後の日本の税制改革に影響を与える可能性もある。
◆もっとも、項目別控除における制限案など、トランプ氏の改革案については詳細が明らかになっていない。また、財政制約や議会の意向により修正されることも十分に考えられる。いずれにしても、米国の税制改正の動向を注意深く見守る必要があるだろう。
◆なお、トランプ氏は児童や老親等のケア費用のための新たな非課税貯蓄口座として扶養親族ケア貯蓄口座(DCSAs)を設けるとしており、日本における自助努力の資産形成を支援する制度の議論にも影響を与える可能性もある。
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