サマリー
◆近年、経済のグローバル化に伴うビジネスモデルの構造変化に各国の税制が追い付いておらず、欧米の一部の多国籍企業が各国の税制の隙間を利用して課税逃れを行う問題が生じている。OECDとG20がこの問題に対処するプロジェクトに取り組み、2015年10月に15項目にわたる勧告を行った。
◆その中で、移転価格税制に関する文書提出制度を見直し、多国籍企業情報の報告制度の整備に関する勧告を行った。これは、多国籍企業グループが税務当局に提出する文書として、グループの全体像を記載する「マスターファイル」、国ごとの収入や納税額を記載する「国別報告書」、移転価格税制で問題となる個々のグループ間取引について記載する「ローカルファイル」を整備するよう、各国に勧告するものである。これらの文書提出制度が整備されれば、各国税務当局は多国籍企業グループについて、これまで入手できなかった情報を入手できるようになる。
◆上記勧告を受け、我が国では平成28年度の租税特別措置法の改正により、上記3種類の文書提出(移転価格文書化)制度を整備した。「マスターファイル」および「国別報告書」については、総収入金額が1,000億円以上の多国籍企業グループが税務当局に提供することが求められる(適用は平成28年4月1日以後に開始する事業年度から)。「ローカルファイル」については、グループ間取引を行った法人に対して、確定申告期限までに作成することや、税務当局から求められた場合に一定期限内に提出することが求められる(適用は平成29年4月1日以後に開始する事業年度から)。
◆OECDおよびG20のプロジェクトには有力な新興国も参加しており、これらの国でも同様な文書提出制度が整備されることが期待される。しかし、近年、日本の企業グループが中国・インド・インドネシアなどの新興国から不適切な課税を受ける事案が多発しており、これらの税務当局に提出される日本の企業グループの情報が拡充された場合、不適切な課税がなされる懸念が増大することとなる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
国債保有優遇・NISA利便性向上を要望
金融庁・令和9年度税制改正要望
2026年09月17日
-
国税庁が非上場株式評価の方向性を公表
簿価純資産と収益力で評価する「残余利益方式」に統一の方向
2026年09月08日
-
教育資金負担を支える子ども支援口座制度
台湾でも新たな子ども支援口座の構想が浮上
2026年07月06日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2026年ジャクソンホール会議の注目点は?
ウォーシュ議長はインフレ抑止に対する姿勢を明確に打ち出すか
2026年08月20日
-
“TACO”指数で読む トランプ大統領の“TACO”化の兆し
市場と世論が映す政策転換のサイン
2026年08月13日
-
高市政権誕生後の長期金利をどうみるか
2035年に3.3~4.0%程度で、海外保有拡大で更なる上昇も
2026年08月12日
-
第230回日本経済予測
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年08月21日
-
GPIFガバナンス改革の功罪と課題解決の道
目先の運用見直しの可能性は低いが、硬直的運用への対応が課題
2026年08月13日
2026年ジャクソンホール会議の注目点は?
ウォーシュ議長はインフレ抑止に対する姿勢を明確に打ち出すか
2026年08月20日
“TACO”指数で読む トランプ大統領の“TACO”化の兆し
市場と世論が映す政策転換のサイン
2026年08月13日
高市政権誕生後の長期金利をどうみるか
2035年に3.3~4.0%程度で、海外保有拡大で更なる上昇も
2026年08月12日
第230回日本経済予測
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年08月21日
GPIFガバナンス改革の功罪と課題解決の道
目先の運用見直しの可能性は低いが、硬直的運用への対応が課題
2026年08月13日

