サマリー
◆現在、厚生労働省は「社会保障・税一体改革成案」に盛り込まれた項目の1つとして、厚生年金の標準報酬月額の上限引上げを検討している。本レポートでは、厚生労働省案実施により、標準報酬月額の上限(現在月給62万円)を健康保険と同じ水準(月給121万円)に引上げた場合について、家計および企業負担の変化を試算・分析した。
◆厚生労働省案を実施した場合のマクロ全体での負担増は、年1兆800億円程度である。労使折半のため、給与所得者・企業ともに年5,400億円程度の負担増(所得控除・損金算入による税負担減を考慮すると、給与所得者・企業ともに3,500億円程度の負担増)となる。2011年度税制改正法案における「法人実効税率5%引下げ+課税ベースの拡大」によるネット減税の規模が年8,000億円であるので、厚生労働省案の実施はこの半分程度を打ち消すことになる。
◆年収975万円以上の給与所得者は、厚生年金保険料が増える。この範囲は、新しい児童手当の所得制限ライン(年収960万円以上)とほぼ重なる。厚生年金保険料負担増による影響だけで、年収1,500万円の者の可処分所得は年21.28万円減少する。
◆東証一部上場企業(金融業除く)における従業員平均年収上位50社について、厚生労働省案実施による経常利益に与える影響を試算したところ、単体ベースの経常利益の0.36~0.47%程度の負担増となった。セクター別では、「情報・通信業」への影響が比較的大きいものと考えられる。
◆厚生労働省案を実施した場合のマクロ全体での負担増は、年1兆800億円程度である。労使折半のため、給与所得者・企業ともに年5,400億円程度の負担増(所得控除・損金算入による税負担減を考慮すると、給与所得者・企業ともに3,500億円程度の負担増)となる。2011年度税制改正法案における「法人実効税率5%引下げ+課税ベースの拡大」によるネット減税の規模が年8,000億円であるので、厚生労働省案の実施はこの半分程度を打ち消すことになる。
◆年収975万円以上の給与所得者は、厚生年金保険料が増える。この範囲は、新しい児童手当の所得制限ライン(年収960万円以上)とほぼ重なる。厚生年金保険料負担増による影響だけで、年収1,500万円の者の可処分所得は年21.28万円減少する。
◆東証一部上場企業(金融業除く)における従業員平均年収上位50社について、厚生労働省案実施による経常利益に与える影響を試算したところ、単体ベースの経常利益の0.36~0.47%程度の負担増となった。セクター別では、「情報・通信業」への影響が比較的大きいものと考えられる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
金融庁、NISAのこども支援措置・投資商品入替措置などを要望
令和8年度税制改正要望—NISAの全世代化に向けた取組みが続く
2025年09月11日
-
道府県民税利子割への清算制度導入を提言
令和8年度税制改正での実現は不透明な情勢
2025年08月13日
-
2012~2024年の家計実質可処分所得の推計
2024年は実質賃金増と定額減税で実質可処分所得が増加
2025年04月11日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日