厚生年金上限引上げ、法人税率引下げを一部相殺

家計・企業への影響試算~家計・企業ともに年約3,500億円の負担増

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2011年11月18日

サマリー

◆現在、厚生労働省は「社会保障・税一体改革成案」に盛り込まれた項目の1つとして、厚生年金の標準報酬月額の上限引上げを検討している。本レポートでは、厚生労働省案実施により、標準報酬月額の上限(現在月給62万円)を健康保険と同じ水準(月給121万円)に引上げた場合について、家計および企業負担の変化を試算・分析した。

◆厚生労働省案を実施した場合のマクロ全体での負担増は、年1兆800億円程度である。労使折半のため、給与所得者・企業ともに年5,400億円程度の負担増(所得控除・損金算入による税負担減を考慮すると、給与所得者・企業ともに3,500億円程度の負担増)となる。2011年度税制改正法案における「法人実効税率5%引下げ+課税ベースの拡大」によるネット減税の規模が年8,000億円であるので、厚生労働省案の実施はこの半分程度を打ち消すことになる。

◆年収975万円以上の給与所得者は、厚生年金保険料が増える。この範囲は、新しい児童手当の所得制限ライン(年収960万円以上)とほぼ重なる。厚生年金保険料負担増による影響だけで、年収1,500万円の者の可処分所得は年21.28万円減少する。

◆東証一部上場企業(金融業除く)における従業員平均年収上位50社について、厚生労働省案実施による経常利益に与える影響を試算したところ、単体ベースの経常利益の0.36~0.47%程度の負担増となった。セクター別では、「情報・通信業」への影響が比較的大きいものと考えられる。

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