金融庁・証券税制案による税・社会保険料の試算修正版

高齢者非課税枠を設ける金融庁要望は、新証券税制による負担増を緩和しうるが、制度上の複雑さは増す

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2008年09月05日

サマリー

◆8月28日に金融庁による2009年度税制改正要望が発表された。金融庁は、高齢者については100万円までの配当を非課税にするなどの税制改正を要望している。かねてより問題にされていたように、新証券税制においては2009/2010年に100万円を超える配当を得た場合には国民健康保険料や後期高齢者医療制度の保険料が高くなるという問題がある。本レポートでは、この金融庁要望が新証券税制による2009/2010年の税・社会保険料の負担増をどれだけ緩和しうるかについて試算したものである。

◆新証券税制による2009/2010年の国保・後期高齢の保険料の増大は、金融庁要望が実施されたとしても変わらないが、金融庁要望の実施によって所得税・住民税が減税されれば、社会保険料の負担増を補う効果が見られる。

◆金融庁要望の実行の方法によっては、社会保険料込みの実効税率が20%以上となる地域が残るケースを排除でき、新証券税制における社会保険料負担増問題の緩和策として効力を発揮することが期待できる。しかし、依然として地域ごとの影響の格差は残り、投資家が自己の有利不利を判断して確定申告をするかしないかを選択しなければならない場合ができるなど制度上の複雑さはさらに増すことになる。

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