2021年03月05日
サマリー
◆上場子会社の少数株主と親会社との間には、利益相反が発生する可能性が指摘されている。この上場子会社少数株主保護のために、「親会社からの独立性」を持った独立社外取締役に大きな期待が寄せられている。現在、コーポレートガバナンス・コード改訂に向けた議論が進められているが、特に上場子会社に対しては、より多くの独立社外取締役選任が求められる可能性もある。
◆各企業が公表するコーポレート・ガバナンス報告書によると、2020年2月現在、上場子会社であるか否かにかかわらず、東証1・2部上場企業の多くが、独立社外取締役を2名以上選任している。一方で上場子会社は、上場子会社ではない企業と比べて、現時点では特別に多くの独立社外取締役を選任しているわけではない。
◆仮に上場子会社に対し、独立社外取締役増員などの一段レベルの高いガバナンス体制が求められた場合、多くの上場子会社が何らかの対応を行う必要がある。具体的にはCGコード改訂に伴い追加される可能性がある「独立社外取締役1/3以上」という原則を満たすためには、東証1部上場の上場子会社は、非独立社外取締役を1.4人程度独立社外取締役に変更するなどの対応を取る必要があることが分かった。
◆2022年4月より、東証の新市場体制がスタートする予定だ。求められるガバナンス体制は再編後の市場により異なる可能性が高いため、各企業やその関係者は、なぜ独立社外取締役が必要とされているのかを見つめなおしたうえで、東証市場再編の方向性と併せて、CGコード改訂の議論を追っていくべきだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
株主優待設計の際に考慮すべき法的論点
配当とみなされないようにした上で、株主平等原則に配慮した設計を
2025年06月17日
-
英国スチュワードシップ・コードの簡素化
機関投資家のコード対応における負担を軽減、開示事項の削減
2025年06月16日
-
議決権行使助言業者規制を明確化:英FRC
スチュワードシップ・コード改訂で助言業者向け条項を新設
2025年06月10日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日