2012年07月02日
サマリー
上場廃止とは、第一義的には、有価証券などが、取引所の開設する市場における売買の対象から外れることである。もっとも、それに伴う流動性の低下などから発行会社や株主に影響が及ぶこととなる。
上場廃止自体は、それほど珍しい事象ではない。しかし、上場会社規律に係わる基準(有価証券報告書等の虚偽記載など)が問題となる事案では、上場維持・廃止を巡り社会的な論議を呼ぶことがある。その理由の一つは、規律違反に対する上場廃止を「懲罰」と解するか(懲罰説)、「品質管理」と解するか(品質管理説)の対立があるものと考えられる。
理論面においては、いずれの考え方も合理性のある見識だといえる。しかし、取引所による自主規制(ソフト・ロー)の特質、株主への影響などを考慮すれば、「品質管理説」に立って、上場会社自身の是正、更正を通じて、規律違反により損なわれた市場機能(品質)の治癒・回復を図った上で、おおよそ是正、更正が期待できない場合にのみ、強制的な退出を求めるのが現実的であるように思われる。ただし、市場によるガバナンスが適切に機能していることが、その前提となる。
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