2017年01月26日
サマリー
◆2017年1月12日、金融安定理事会(FSB)は、最終報告「資産運用業の活動から生じる構造的な脆弱性に対応する政策提言」(最終報告)を公表している。
◆最終報告の意図は、「資産運用業者及びファンドに将来のストレスイベントに対する十分な準備をさせる」こと、そして「資産運用業セクターから生じる潜在的なリスクを法域内・間で把握するために当局が入手可能な情報を顕著に強化する」ことにある。最終報告が検討対象としているのは、あらゆるタイプの「ファンド」である。もっとも、マネー・マーケット・ファンド(MMF)、年金基金および政府系ファンド(SWFs)は検討対象から除外されている。
◆最終報告は、潜在的に金融安定リスクをもたらしうる資産運用業の活動から生じる構造的な脆弱性に対応する14の政策提言を提示している。FSBは、その中で、(ⅰ)流動性ミスマッチ、(ⅱ)レバレッジ、が重要であるとしている。
◆流動性ミスマッチに係る政策提言としては、オープンエンド型ファンドを対象として、ストレステストの実施、スイング・プライシングや償還手数料の導入、流動性の状況に係る開示の強化が提言されている。レバレッジに係る政策提言としては、一貫性のあるレバレッジの計測方法の策定、規制監督当局によるモニタリング(必要に応じて介入)が提言されている。
◆資産運用業界は、最終報告にそれほど恐れを抱いていないものと思われる。というのも、その政策提言の多くは(銀行規制に類似しているというよりは)業界特有のもので、かつ、すでに各々の規制監督当局で検討されているものを反映しているにすぎないからである 。しかし、米国投資信託協会(ICI)は、FSB が資産運用業者を「銀行・保険会社以外のグローバルなシステム上重要な金融機関(NBNI G-SIFIs)」に認定するか否かの検討を再開する意図を持ち続けている点に懸念を示している。
◆流動性ミスマッチおよびレバレッジに関する政策提言は、証券監督者国際機構(IOSCO) によって具体化される(前者は2017 年中、後者は2018 年中)。
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