2016年12月12日
サマリー
◆2016年6月22日、金融安定理事会(FSB)は、市中協議文書「資産運用業の活動からの構造的な脆弱性に対する政策提言案」(市中協議文書)を公表している(コメント提出期限は2016年9月21日)。
◆市中協議文書の意図は、「金融市場における将来のストレス時における資産運用業者とファンドの回復力を強化」することにある。市中協議文書が検討対象としているのは、あらゆるタイプの「ファンド」である。もっとも、マネー・マーケット・ファンド(MMF)、年金基金および政府系ファンド(SWFs)は検討対象から除外されている。
◆市中協議文書は、潜在的に金融安定リスクをもたらしうる資産運用業の活動からの構造的な脆弱性に対応する14の政策提言案を提示している。FSBは、その中で、(ⅰ)流動性ミスマッチ、(ⅱ)レバレッジ、が重要であるとしている。
◆流動性ミスマッチに係る政策提言案としては、オープンエンド型ファンドを対象として、ストレス・テストの実施、スイング・プライシングや償還手数料の導入、流動性の状況に係る開示の強化が提案されている。
◆レバレッジに係る政策提言案としては、簡素で一貫性のあるレバレッジの計測方法の策定、規制監督当局によるモニタリング(必要に応じて介入)が提案されている。
◆当面はNBNI G-SIFIs(銀行・保険会社以外のグローバルなシステム上重要な金融機関)に認定されるリスクがなくなった今、資産運用業界は市中協議文書の提案にそれほど恐れを抱いていないと報じられている。というのも、その提案の多くは(銀行規制に類似しているというよりは)業界特有のもので、かつ、すでに各々の規制監督当局で検討されているものを反映しているにすぎないからである 。
◆FSBは、2016年末までに政策提言を最終化する予定である。最終化された政策提言の多くは、証券監督者国際機構(IOSCO)によって具体化される。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
自己資本比率規制における内部格付手法の影響
内部格付手法採用行は自己資本比率の分母を7割程度に圧縮
2025年03月10日
-
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日
-
SFDRのQ&A、9条ファンドの要件緩和へ
「格下げ」のトレンドは終焉し、パッシブ・ファンドが増加するか
2023年05月25日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日