バーゼル委、シャドーバンキング問題を直視

【BCBS市中協議文書】「ステップイン・リスク」、連結か資本賦課?

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  • ニューヨークリサーチセンター 主任研究員(NY駐在) 鈴木 利光

サマリー

◆2015年12月17日、バーゼル銀行監督委員会(BCBS)は、市中協議文書「ステップイン・リスクの特定と評価」(市中協議文書)を公表している(コメント提出期限は2016年3月17日)。


◆ステップイン・リスクとは、「金融ストレス時に銀行が、シャドーバンク等の事業体に対して契約上の義務を超えて財政上支援するリスク」をいう。「契約上の義務を超えて」という点で、現行のバーゼル規制上のオフバランスシート・エクスポージャーから区別される。


◆ここでいう「シャドーバンク等」は、もっぱら非連結の事業体であり、証券化のための導管体、投資ビークル(SIV)、そしてMMFが代表的な例として挙げられている。ステップイン・リスクが生じるのは、これらの非連結のシャドーバンク等の破綻が銀行にレピュテーショナル・リスク(風評リスク)をもたらすためである。


◆市中協議文書では、まず、二段階の指標を用いて、潜在的に存在するステップイン・リスクを特定する旨提案している。


◆そして、ここで特定したステップイン・リスクをバーゼル規制上どのように評価するかについて、「連結アプローチ」(ステップイン・リスクの対象となるシャドーバンク等を連結するという評価方法)及び「資本賦課アプローチ」(ステップイン・リスクの対象となるシャドーバンク等の総資産に一定の掛目を乗じて、自己資本比率計算の分母に算入するという評価方法)という二つのアプローチを提案している。


◆市中協議文書は、ステップイン・リスクの特定と評価に係る指標やアプローチを示しているにすぎず、これを具体的にどのような形でバーゼル規制の改定に反映させるかまでは提案していない。


◆なお、最終規則の公表時期や、その適用時期は未定である。

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