2015年06月15日
サマリー
◆2015年6月8日、バーゼル銀行監督委員会(BCBS)は、市中協議文書「銀行勘定の金利リスク」(市中協議文書)を公表している(コメント提出期限は2015年9月11日)。
◆市中協議文書は、バーゼル規制における銀行勘定の金利リスク(IRRBB: Interest rate risk in the banking book)の取扱いの見直しを提案するものである。
◆市中協議文書は、IRRBBの取扱いについて、「第一の柱」で資本賦課の対象とする案(1柱案)と、現行のアウトライヤー規制を強化する案(2柱案)の両論併記となっている。
◆1柱案では、IRRBBの金利リスク量の計測を定式化し、算出された金利リスク量を自己資本比率の分母に算入する。すなわち、IRRBBを資本賦課の対象とする。これに対して、2柱案では、現行のアウトライヤー規制を強化している。すなわち、現行のアウトライヤー規制では自己資本全体に対する金利リスク量の割合をターゲットにしているところ、2柱案では普通株式等Tier 1資本又はTier 1資本に対する金利リスク量の割合をターゲットにしている。
◆銀行からみて望ましいのは、もちろん、2柱案であろう。
◆ただし、1柱案であっても、資産と負債の両サイドを勘案し、それぞれの金利リスク量のネット・アウトを認めていることから、コア預金を多く保有する銀行であれば、資本賦課のインパクトを緩和することが可能である。
◆BCBSは、市中協議文書に対するコメントや定量的影響度調査(QIS)の結果を踏まえ、秋以降に議論を再開する予定である(最終規則の公表時期は未定)。
◆なお、市中協議文書は、国際統一基準行を適用対象としている。わが国の規制当局が市中協議文書を国内基準行にも適用するか否かについては、また別の議論が必要になろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
自己資本比率規制における内部格付手法の影響
内部格付手法採用行は自己資本比率の分母を7割程度に圧縮
2025年03月10日
-
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日
-
SFDRのQ&A、9条ファンドの要件緩和へ
「格下げ」のトレンドは終焉し、パッシブ・ファンドが増加するか
2023年05月25日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日