2015年01月29日
サマリー
◆2015年1月23日、バーゼル銀行監督委員会(BCBS)は、“The Basel Committee's work programme for 2015 and 2016”(「BCBSワーク・プログラム(2015-2016)」)を公表している。ここで注目されるのが、ソブリン・リスクの規制上の取扱いの見直しに関する記述である。
◆現行のバーゼル規制は、自国通貨建ての自国ソブリン向けエクスポージャーのうち自国通貨建てで調達されたものについては、各管轄(法域)の裁量により、適格格付機関の格付やカントリー・リスク・スコアに基づくものより低いリスク・ウェイトを適用することを認めている(標準的手法)。そのため、例えば日米欧では、このオプションを援用し、自国通貨建て(欧州ではEU圏内の通貨建て)の自国(欧州ではEU圏内)ソブリン向けエクスポージャーのうち自国通貨建て(欧州ではEU圏内の通貨建て)で調達されたものは、リスク・フリー(リスク・ウェイト0%)としている。
◆このような取扱いに起因する矛盾は、2010年の欧州ソブリン危機で顕著になっている。というのも、デフォルトの危機にさらされたEU加盟国の国債であっても、EU圏内の通貨建て(例えばユーロ建て)であり、同通貨建てで調達されたものであれば、リスク・フリーとすることが認められたためである。
◆ソブリン・リスクの規制上の取扱いの見直しについて、「BCBSワーク・プログラム(2015-2016)」では、その内容や時期については一切触れられていない。
◆そのため、推測の域を出ないが、見直しの内容については、自国通貨建て(欧州ではEU圏内の通貨建て)の自国(欧州ではEU圏内)ソブリン向けエクスポージャーのうち自国通貨建て(欧州ではEU圏内の通貨建て)で調達されたものをリスク・フリーとする取扱いの是非が含まれるのではないかと思われる。
◆見直しの時期については、2016年までに市中協議文書の公表にこぎつけることがBCBSのターゲットであると思われるが、政治的にセンシティブなテーマであるがゆえに、その実施については、バーゼルⅢの完全実施が求められる2019年1月よりも前倒しになるということはないものと思われる。
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