流動性カバレッジ比率(LCR)の告示案

【金融庁告示案】国際統一基準行、2015年3月末よりLCRの段階適用

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  • ニューヨークリサーチセンター 主任研究員(NY駐在) 鈴木 利光

サマリー

◆2014年7月31日、金融庁は、流動性カバレッジ比率(LCR: Liquidity Coverage Ratio)に係る「告示」の案(LCR告示案)を公表している(コメント提出期限は2014年9月1日)。


◆LCRとは、「ストレス下において30日間に流出すると見込まれる資金(分母)を賄うために、短期間に資金化可能な資産(分子)を十分に保有しているかを表す指標」を指す。バーゼル銀行監督委員会(BCBS)は、2010年12月に公表した「バーゼルⅢ」にて、新たにLCRをバーゼル規制(国際的な銀行の自己資本比率規制に関するガイドライン)に加えている。


◆LCR告示案は、BCBSが2013年1月に公表したLCRの最終報告(LCRテキスト)を、我が国の法律等に落とし込むものである。


◆LCR告示案の適用対象は、国際統一基準行である。具体的には、海外営業拠点を有する銀行、海外営業拠点を有する銀行又は長期信用銀行を子会社とする銀行持株会社、海外拠点を有する信用金庫連合会、農林中央金庫、商工組合中央金庫、最終指定親会社である。


◆当然のことながら、LCR告示案の内容は、LCRテキストの内容と概ね一致している。もっとも、一点、LCR告示案には、LCRテキストと比して不透明な部分がある。それは、流動性ストレス時における適格流動資産の利用の是非である。


◆BCBSは、LCRテキストにて、流動性ストレス時においては、適格流動資産を利用し、その結果としてLCRが100%を下回ることを許容している。


◆これに対して、LCR告示案では、そのような場合の取扱いが規定されていない。この点については、今後、「監督指針」や「Q&A」の改正にて手当てがされるか否かが注目されよう。

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