2013年06月20日
サマリー
◆2013年3月26日、バーゼル銀行監督委員会(BCBS)は、市中協議文書「大口エクスポージャーの計測と管理のための監督上の枠組」(市中協議文書)を公表している(コメント提出期限は2013年6月28日)。
◆市中協議文書公表の背景には、昨今の金融危機の教訓がある。
◆教訓の一つは、銀行が常に一貫した方法で一つのカウンターパーティに対するエクスポージャーを計測、合算そして管理していたわけではなかった、ということである。BCBSは、この教訓から、市中協議文書を通じて、一つのカウンターパーティに対するエクスポージャーの計測、合算、管理の方法について、更なる一貫性を確保することを企図している。
◆もう一つの教訓は、一つのシステム上重要な金融機関(SIFIs)における重大な損失が、他のSIFIsのソルベンシーに対する懸念をもたらしうるということである。BCBSは、この教訓から、グローバルにシステム上重要な銀行(G-SIBs)間のエクスポージャーについては、その大口エクスポージャーの上限を「普通株式等Tier1(CET1)又はTier1の10%から15%の間」に引き下げることを提案している。
◆また、市中協議文書公表の背景には、金融安定理事会(FSB)によるリクエストという側面もある。FSBは、2011年10月に“Shadow Banking: Strengthening Oversight and Regulation”という報告書を公表している。この報告書を受けて、BCBSは、集団投資スキーム(CIU)、証券化のためのストラクチャーに対するエクスポージャーを大口エクスポージャー規制の対象に含めることを提案している。
◆BCBSは、市中協議文書におけるすべての提案を、2019年1月1日から完全適用することを提案している(段階適用なし)。
◆市中協議文書が最終文書になった段階で、我が国の大口信用供与等規制においても、その提案を踏まえた改正がなされるものとみていいだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
自己資本比率規制における内部格付手法の影響
内部格付手法採用行は自己資本比率の分母を7割程度に圧縮
2025年03月10日
-
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日
-
SFDRのQ&A、9条ファンドの要件緩和へ
「格下げ」のトレンドは終焉し、パッシブ・ファンドが増加するか
2023年05月25日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
-
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日