2011年12月08日
サマリー
◆2011年11月15日、欧州連合(EU)の行政執行機関である欧州委員会は、2010年12月より施行されている格付機関規制法(CRAレギュレーション)の見直しに関する法案(CRAレギュレーション改訂ドラフト)を公表している。
◆現行のCRAレギュレーションは、CRAの登録、行為規制(利益相反の防止、格付けの透明性に関するアニュアル・レポートの開示等)、そして監督に焦点を当てている。
◆もっとも、欧州委員会の指摘によると、CRAレギュレーションは、金融危機や昨今のユーロ圏におけるソブリン債のデフォルト危機(ユーロ危機)に際して懸念が示されてきた問題、すなわち格付け(外部格付)への過度の依存、ソブリン債の格付プロセスの不透明性、格付市場の寡占状況、CRAの民事責任の不十分性、そしてCRAの報酬体系(“issuer-pays”モデル)に内在する利益相反への手当てが十分にはなされていない。CRAレギュレーション改訂ドラフトは、これらの問題への解決策を提案するものである。
◆CRAレギュレーション改訂ドラフトの目的は、(1)外部格付への依存の抑制(“cliff effect”の緩和)、(2)ソブリン債の格下げがもたらす伝播(contagion)リスクの緩和、(3)格付市場の寡占状況の改善、(4)投資家の損失補償対応の強化、(5)CRAの独立性、格付手法および格付プロセスにおける堅実性の強化、の5つである。
◆具体的には、ストラクチャード・ファイナンス商品の依頼格付に2つ以上のCRAによる格付けを要求すること(1)、ソブリン格付の公表のタイミングを取引所のクローズ後に限定すること(2)、格付スケールの統一(3)、CRAの民事責任の強化(4)、「ローテーション・ルール」の導入(5)等が提案されている。
◆2010年11月のコンサルテーション文書で検討されていた、EUレベルの独立のCRAを新設するというオプションは、コストの問題や(EU加盟国を格付けする際の)利益相反のおそれから、断念している。
◆そして、ベイルアウトの必要が生じているような「例外的な状況」においてはソブリン債の格付発行を制限または禁止するという、「ソブリン格付のサスペンション」も、直前で提案が見送られている。もっとも、数名の欧州議員がこのオプションの復活を企図していると報じられており、今後の欧州議会における審議が注目される。
◆現行のCRAレギュレーションは、CRAの登録、行為規制(利益相反の防止、格付けの透明性に関するアニュアル・レポートの開示等)、そして監督に焦点を当てている。
◆もっとも、欧州委員会の指摘によると、CRAレギュレーションは、金融危機や昨今のユーロ圏におけるソブリン債のデフォルト危機(ユーロ危機)に際して懸念が示されてきた問題、すなわち格付け(外部格付)への過度の依存、ソブリン債の格付プロセスの不透明性、格付市場の寡占状況、CRAの民事責任の不十分性、そしてCRAの報酬体系(“issuer-pays”モデル)に内在する利益相反への手当てが十分にはなされていない。CRAレギュレーション改訂ドラフトは、これらの問題への解決策を提案するものである。
◆CRAレギュレーション改訂ドラフトの目的は、(1)外部格付への依存の抑制(“cliff effect”の緩和)、(2)ソブリン債の格下げがもたらす伝播(contagion)リスクの緩和、(3)格付市場の寡占状況の改善、(4)投資家の損失補償対応の強化、(5)CRAの独立性、格付手法および格付プロセスにおける堅実性の強化、の5つである。
◆具体的には、ストラクチャード・ファイナンス商品の依頼格付に2つ以上のCRAによる格付けを要求すること(1)、ソブリン格付の公表のタイミングを取引所のクローズ後に限定すること(2)、格付スケールの統一(3)、CRAの民事責任の強化(4)、「ローテーション・ルール」の導入(5)等が提案されている。
◆2010年11月のコンサルテーション文書で検討されていた、EUレベルの独立のCRAを新設するというオプションは、コストの問題や(EU加盟国を格付けする際の)利益相反のおそれから、断念している。
◆そして、ベイルアウトの必要が生じているような「例外的な状況」においてはソブリン債の格付発行を制限または禁止するという、「ソブリン格付のサスペンション」も、直前で提案が見送られている。もっとも、数名の欧州議員がこのオプションの復活を企図していると報じられており、今後の欧州議会における審議が注目される。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
自己資本比率規制における内部格付手法の影響
内部格付手法採用行は自己資本比率の分母を7割程度に圧縮
2025年03月10日
-
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日
-
SFDRのQ&A、9条ファンドの要件緩和へ
「格下げ」のトレンドは終焉し、パッシブ・ファンドが増加するか
2023年05月25日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日