国債格付とバーゼル規制

S&Pの格付見直しとリスク・ウエイトへの影響

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  • 吉井 一洋

サマリー

◆2011年4月27日、スタンダード・アンド・プアーズレーティング・サービシズ(以下「S&P」という)※は、日本の長期国債の格付を、「AA-安定的」から「AA-ネガティブ」に変更した。※S&Pは金融商品取引法上の無登録格付機関

◆バーゼル規制の標準的手法では国債について「AA-」は、まだリスク・ウエイト0%の水準だが、そのすぐ下の「A+」では20%となる。銀行等向け債権も、ソブリンに連動させる方法を採用している国・地域(わが国も含む)の場合は、リスク・ウエイトは50%となる。

◆ただし、わが国の銀行等が保有する場合、円建て国債のリスク・ウエイトは格付に関係なく0%、円建ての銀行等向けの債権のうち短期(3ヶ月以内)の債権の場合は、格付に関係なく20%のリスク・ウエイトが適用される。長期債権はソブリン向け債権の格付に連動する。

◆海外の銀行等が保有する円建て国債やわが国の銀行等向け短期債権については、国・地域によっては、わが国と同様の取扱いが認められる可能性がある。わが国の銀行等向け長期債権も、ソブリンに連動させる方法を採用していない国・地域の場合は、ソブリン向け債権の格下げの影響を直接は受けない。ソブリン向け債権に連動する場合でも、複数の適格格付機関の格付がある場合は、2番目に低いリスク・ウエイトが適用されるし、カントリー・リスク・スコアを利用できる場合もある。即ち、今後、S&Pの日本の長期国債の格付が「A+」に引き下げられたとしても、わが国の国債や銀行等向け債権のリスク・ウエイトが直ちに引き上げられるわけではない。

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