サマリー
◆2024年6月11日・12日に開催されたFOMC(連邦公開市場委員会)では、政策金利であるFF(フェデラルファンド)レートの誘導目標レンジが、従来の5.25-5.50%で据え置かれた。これで、2023年9月のFOMC以降、7会合連続で金利は据え置きとなった。
◆今回のFOMCで公表された FOMC 参加者の経済見通し(SEP)については、実質GDP成長率見通しが据え置きとなり、失業率も小幅な上方修正(悪化)に留まる一方、物価見通しが上方修正された。景気が堅調に推移する中で、インフレ率の減速が緩やかなものに留まるとの見立てが示された。
◆こうしたSEPを踏まえ、FOMC参加者のFF金利見通し (ドットチャート)は、2024年の中央値が上方修正され、2024年内の利下げ幅の想定が、3月時点の合計0.75%ptから0.25%ptに引き下げられた。他方で、2025年末の中央値も上方修正されたものの、2025年の利下げ幅については3月時点の合計0.75%ptから、1.00%ptに拡大された。2026年末のFF金利水準は3.1%と前回予想(3月時点)と変わらなかった。
◆最大の注目点である利下げ開始のタイミングに関しては、記者会見当日に公表された5月のCPIのように、インフレ減速を示す良好な結果が継続することがカギとなる。5月のコアCPIで大幅に減速したコアサービス価格(家賃除く)は、労働需給のひっ迫度合いの緩和を反映したもので、インフレ減速に向けてポジティブな兆しといえる。
◆他方で、11月の大統領選挙を控え、不法移民の抑制と最低賃金の引き上げといった、有権者の不満解消を目指す動きが見られ、賃金上昇率が下げ渋る可能性がある。米国経済がインフレ減速、および利下げの判断という重要なフェーズへと移行する中で、政治の季節到来が不確定要素になりつつある点は注意を要する。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
米GDP 前期比年率+3.0%とプラスに転じる
2025年4-6月期米GDP:輸入の反動減が押し上げた一方、内需は減速
2025年08月01日
-
FOMC 9月利下げに向けて含みを持たせる
インフレ統計の歪みと雇用統計の弱含みに注目
2025年07月31日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
-
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
-
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
-
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
のれんの償却・非償却に関する議論の展望
2025年07月07日
日本経済見通し:2025年7月
25年の賃上げは「広がり」の面でも改善/最低賃金の目安は6%程度か
2025年07月22日
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
新たな相互関税率の適用で日本の実質GDPは短期で0.8%、中期で1.9%減少
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.7%減少
2025年07月08日