サマリー
◆2024年3月19日・20日に開催されたFOMC(連邦公開市場委員会)では、政策金利であるFF(フェデラルファンド)レートの誘導目標レンジが、従来の5.25-5.50%で据え置かれた。2023年9月のFOMC以来、5会合連続で金利据え置きとなった。今回の決定は市場参加者にとってサプライズとはならなかった。
◆今回のFOMCで公表されたFOMC参加者の経済見通し(SEP)については、実質GDP成長率見通しが上方修正されたことで、失業率は小幅に下方修正され、物価見通しが一部上方修正された。景気が想定よりも堅調に推移する中で、インフレ率の減速ペースも緩やかになるとの見立てが示された。こうしたSEPを踏まえ、FOMC参加者のFF金利見通し(ドットチャート)は、2024年の中央値こそ変更はなかったものの、形状はタカ派化した。他方で、中央値が引き上げられた2025年、2026年は中央値よりも低い金利を予想する参加者が多く、タカ派一色というわけでもない。インフレ抑制に向けた道筋が不透明な中で、先行きの利下げのペースも現時点では不確実性が高いということだろう。
◆注目点の①利下げまでの距離感、②量的引き締め(QT)のペースの減速に関する見通しについてまとめると、①に関しては、現時点では従来通り2024年央の利下げ開始がベースシナリオである。直近のインフレ指標が市場予想対比で上振れしたとはいえ、今後はFOMC参加者が予想するインフレ率の中央値を下回る伸びとなることが想定される。利下げタイミングの後ずれはあくまでもリスクシナリオと考えるべきだろう。
◆②QTのペースに関しては、今回の記者会見の冒頭説明で、パウエルFRB議長は、FOMC参加者の一般的な認識として近い将来(fairly soon)にQTのペースを減速させることが適当と述べた。近い将来という表現を用いたことを踏まえれば、QTのペースの減速に関しては、ベースシナリオとしては次回(4月30日・5月1日)FOMC、遅くとも次々回(6月11日・12日)のFOMCでの実施が想定される。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
0.50%への利上げが家計・企業に与える影響
家計では「30~40代」の世帯、企業では「中小」で負担が大きい
2025年01月22日
-
CISA が初の国際戦略を発表
DIR SOC Quarterly vol.10 2025 winter 掲載
2025年01月22日
-
「103万円の壁」与党改正案の家計とマクロ経済への影響試算(第4版)
71万人が労働時間を延ばし、個人消費は年0.5兆円拡大の見込み
2025年01月21日
-
欧州サイバーレジリエンス法(EU Cyber Resilience Act)の発効
DIR SOC Quarterly vol.10 2025 winter 掲載
2025年01月21日
-
Scope3排出量の削減目標達成にカーボンクレジットは使えるようになるのか?
2025年01月22日
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
-
「トランプ関税2.0」による日本経済への影響試算
中間財の出荷減や米国等の景気悪化で日本の実質GDPは最大▲1.4%
2024年12月18日
-
課税最低限「103万円の壁」引上げによる家計と財政への影響試算(第3版)
様々な物価・賃金指標を用いる案および住民税分離案を検証
2024年12月04日
-
長寿化で増える認知症者の金融資産残高の将来推計
金融犯罪を含む金融面の課題やリスクへの対応も重要
2024年12月20日
-
石破政権の看板政策「2020年代に最低賃金1500円」は達成可能?
極めて達成困難な目標で、地方経済や中小企業に過重な負担の恐れ
2024年10月17日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
「トランプ関税2.0」による日本経済への影響試算
中間財の出荷減や米国等の景気悪化で日本の実質GDPは最大▲1.4%
2024年12月18日
課税最低限「103万円の壁」引上げによる家計と財政への影響試算(第3版)
様々な物価・賃金指標を用いる案および住民税分離案を検証
2024年12月04日
長寿化で増える認知症者の金融資産残高の将来推計
金融犯罪を含む金融面の課題やリスクへの対応も重要
2024年12月20日
石破政権の看板政策「2020年代に最低賃金1500円」は達成可能?
極めて達成困難な目標で、地方経済や中小企業に過重な負担の恐れ
2024年10月17日