サマリー
◆昨年来の急ピッチでの金融引き締めに、銀行破綻に伴う資金調達環境の悪化が加わり、2023年の米国経済は景気後退に陥るとの見方が市場やFOMC参加者の中で主流であった。しかし、ふたを開けてみれば米国経済は足元まで堅調さを維持している。住宅投資は低調となり、設備投資も減速傾向を見せているが、屋台骨である個人消費が好調を維持しており、米国経済を下支えしてきた。
◆一方で、引き締め的な金融環境のもと、2024年の1-3月期、4-6月期の実質GDP成長率はそれぞれ前期比年率+1%を下回る水準までペースダウンすると予想する。需要が抑制されることで最大の懸念事項であるインフレは更に減速し、結果的に2024年央には金融政策は利下げへと転じると見込む。金融環境が幾分緩和することで、7-9月期、10-12月期の実質GDP成長率はそれぞれ前期比年率で+1%を超えるペースを回復すると予想する。なお、2024年通年で見れば実質GDP成長率は前年比+1.5%と、同+2.0%前後とされる潜在成長率を下回ると見込む。
◆インフレが緩やかに減速し、金融政策も利下げへと転じることで、雇用環境や景気も大幅な悪化を回避するというソフトランディングが2024年の米国経済のメインシナリオである。一方、リスク要因として、①屋台骨である個人消費の腰折れ、②インフレ率の高止まり、③政治の停滞が挙げられる。インフレ率の高止まりによって金融引き締めが長引くことで、市場の利下げ期待が剥落、株価等の資産価格が下落し、その結果として逆資産効果が発生、個人消費が腰折れするという、リスク要因の①と②が連動するような事態が2024年の米国経済を巡る最大のリスクシナリオとなろう。そして、2024年11月の大統領選挙を控え、民主・共和両党間の対立が激化するという③政治の停滞が想定される。上記のリスクシナリオが現実化しても、必要な政策対応が遅れる可能性があるという点にも留意が必要だろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
米失業率は4.6%に上昇
2025年10・11月米雇用統計:政府閉鎖の影響を踏まえ、慎重な評価が必要
2025年12月17日
-
米銀最大手、9.7兆ドルの国債保有増加余地
レバレッジ比率緩和、米国国債市場の機能改善をもたらすか
2025年12月16日
-
FOMC 3会合連続で0.25%の利下げを決定
2026年は合計0.25%ptの利下げ予想も、不確定要素は多い
2025年12月11日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
-
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
-
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日

