サマリー
◆2023年3月の雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月差+23.6万人と2月から減速した。とはいえ、3カ月移動平均で見ると3月が同+34.5万人と2月とほぼ同程度の伸び幅となったように、均せば底堅い結果といえる。また、失業率は同▲0.1%ptと低下(改善)し、3.5%となった。内容を見ると、就業者に関しては非自発的パートタイム就業者が5カ月連続で増え、失業者に関しては解雇による失業者の増加幅が2020年9月以来の大きさになるなど、雇用環境の悪化を示すデータもある。
◆もっともこれらのデータは、銀行不安による影響が出る前の雇用環境を映すバックミラーの意味合いが強いかもしれない。今後、企業は資金繰り難に直面し、人員削減を進める可能性があるだろう。先行きの雇用環境の注目点は、景気変動に対して相対的に小幅な変動となる低賃金業種の雇用者数である。仮に低賃金業種の雇用者数が大幅に落ち込めば、景気の悪化程度は深刻であり、雇用環境へのダメージも大きいと判断できる。
◆金融政策の運営に関して、5月2日・3日に開催される次回FOMCでは、0.25%ptの利上げが実施されるか、あるいは、据え置きとなるかが注目点となっている。底堅い結果となった今回の雇用統計が0.25%ptの利上げ実施を妨げるようなことはない。しかし、現在はFOMC参加者が銀行不安そのものや米国経済への影響の分析を進めている最中にあり、利上げの可否に関しても5月の次回FOMCのぎりぎりのタイミングまで検討を続けることが想定される。それまでに、週次の商業銀行の資産・負債統計(H.8)や物価指標(CPI:4月12日、PCE(個人消費支出)価格指数:4月28日)、GDP(4月27日)など重要指標が控えており、利上げの可否はその結果次第となろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
-
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
-
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
-
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
-
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日