サマリー
◆2022年11月の雇用統計では、非農業部門雇用者数の伸びが市場予想を上回るとともに、失業率も横ばいとなり、安心感のある結果となった。一方、非自発的失業や非自発的パートタイム就業者が増加したように、10月に引き続き好悪材料が入り交じり、景気の減速を反映するような結果ともいえる。このほか、注目の賃金上昇率は前月比及び前年比で加速した。非労働力人口が増加するなど、労働需給のタイトさは継続しており、最大の懸念材料であるインフレ加速に関して、収束は見通しにくい状況が続いている。
◆雇用環境の先行きの注目点の一つであるIT大手の人員整理に関しては、12月の雇用統計に反映されることで通信関連の雇用者数の減少も想定される。ただし、失業保険申請件数の急増は足下まで見られないことから、人員整理対象者が新たな働き先をスムーズに見つけられている可能性もあるだろう。10月は求人件数が減少したとはいえ、高水準にあることから、雇用環境の急激な悪化を抑制すると同時に、労働需給の緩和にも時間を要することを示唆している。
◆最後に金融政策運営に関して、11月30日にパウエルFRB議長は講演会で12月FOMCでの利上げ幅の縮小を示唆するとともに、FF金利の最終到達水準(ターミナルレート)に関して、9月FOMCで公表されたFOMCの金利見通し(ドットチャート)よりも若干高くなる可能性を指摘した。今回の雇用統計を踏まえれば、12月13日・14日予定のFOMCでは0.50%ptの利上げがメインシナリオとなる。ただし、ターミナルレートについては、労働需給のタイトさが継続し、賃金上昇率が加速する中で、市場のメインシナリオである4.75-5.00%より上振れする可能性はあるだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
非農業部門雇用者数は前月差+13.9万人
2025年5月米雇用統計:緩やかな悪化に留まっていることを示唆
2025年06月09日
-
米国経済見通し 米中デタントも、景気は減速へ
財政悪化と学生ローン政策の変更が景気を一層減速させるリスク要因
2025年05月23日
-
FOMC 様子見姿勢を強調
景気・インフレに加え、金融環境の変化が利下げのタイミングを左右
2025年05月08日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日