サマリー
◆2022年11月1・2日に開催されたFOMC(連邦公開市場委員会)では、政策金利であるFF(フェデラルファンド)レートの誘導目標レンジが、従来の3.00-3.25%から3.75-4.00%へと0.75%pt引き上げられた。9月のFOMCに続き、4会合連続で0.75%ptの大幅利上げとなり、FFレートの水準は2007年12月以来の高さとなった。なお、今回の0.75%ptの利上げは、市場参加者にとってサプライズとはならなかった。
◆11月のFOMCでの利上げ幅が想定通りとなったことで、市場参加者にとって最大の注目点は今後の利上げ幅縮小の可能性に関してであった。今回の声明文では、利上げ幅の決定に際し、金融引き締めの広範な影響や遅効性、そして景気全体を考慮することが盛り込まれた。また、パウエルFRB議長は記者会見で、まだ何も決まっていないとしつつも、12月のFOMC或いは2023年2月のFOMCにおいて利上げペースを遅らせる可能性があると述べた。
◆一方で、パウエル議長はFF金利の最終到達水準(ターミナルレート)の引き上げを提起し、利上げ停止は時期尚早とも述べた。これは、FOMCが利上げ幅の縮小可能性を示唆した結果、市場が金融引き締めの終わりを意識することで、金融環境が過度に緩和化してしまえば、需要喚起を後押しし、インフレ率が高止まりしてしまうリスクが高まることに釘を刺したということだろう。
◆今回のFOMCをまとめれば、FOMCは利上げ幅縮小を提起した一方で、ターミナルレートの引き上げを指摘し、金融環境を引き締めも緩和もしないようバランス取りに終始したといえる。なお、12月のFOMCで利上げ幅の縮小に関しても、既定路線と過信するのは早計である。とりわけ、市場が金融引き締めの終わりが近づくと期待しすぎると、それで金融環境が緩和してしまうかもしれない。FRBは12月のFOMCでも0.75%ptの利上げ幅を維持することで、金融環境のタイトさを維持しなければならなくなる可能性がある。その点には注意が必要だろう。
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