サマリー
◆2022年9月の雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月差+26.3万人となり、市場予想を小幅に上回った。失業率は同▲0.2%ptの3.5%と市場予想を下回った(改善)ものの、失業率の押し下げ要因は非労働力人口の増加(=労働市場への参入減)であり、労働需給が依然としてタイトな中ではネガティブな要素といえる。
◆最大の懸念材料であるインフレ加速に関して、賃金上昇率が前年比で減速した点はポジティブな結果といえる。しかし、労働需給がタイトな中で労働参加が減少した点は、賃金上昇圧力、ひいてはインフレ圧力がなかなか緩和されない可能性も示唆している。
◆雇用環境の先行きに関しては、労働参加が伸び悩む中で、労働需要の減退が徐々に進むことで、緩やかに減速していくと見込む。ただし、労働需要について、求人件数が足下で減速しつつあるが高水準のままであり、雇用環境の急激な悪化は考えにくく、労働需給のタイトさの緩和にも時間を要すると想定される。
◆最後に金融政策運営に関して、直近の見通しである9月のFOMCの参加者によるFF金利予想の中央値では、年内残る2回の会合で合計1.25%ptの利上げが想定されている。今回の雇用統計の結果は、11月1・2日のFOMCで0.75%ptの利上げを継続する可能性を高めると考えられる。インフレ圧力を長引かせ得る労働需給のタイトさを緩和するためには、労働供給が伸び悩んでいる以上、金融引き締めを通じて労働需要を減退させる必要がある。足下の求人件数や失業者数の水準を踏まえれば、FOMCが利上げペースを減速させるハードルは高いといえるだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
2024年12月消費統計
耐久財は強いが非耐久財が弱く、総じて見れば前月から概ね横ばい
2025年02月07日
-
インド2025年度予算案:消費回復が民間投資を促す好循環を生むか
企業投資の誘発効果の大きい耐久財セクターへの波及がポイント
2025年02月06日
-
消費データブック(2025/2/4号)
個社データ・業界統計・JCB消費NOWから消費動向を先取り
2025年02月04日
-
「稼ぐ力」の強化に向けたコーポレートガバナンス研究会 会社法の改正に関する報告書
従業員等への株式の無償交付、株式対価M&A、実質株主の把握など
2025年02月04日
-
中小企業の更なるM&A促進には環境整備が急務
2025年02月07日
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
-
2025年度税制改正大綱解説
大綱の公表で完結せず、法案の衆議院通過まで議論が続くか
2025年01月06日
-
2025年の中国経済見通し
注目点は①不動産不況の行方、②トランプ2.0 vs 内需拡大
2024年12月20日
-
石破政権の看板政策「2020年代に最低賃金1500円」は達成可能?
極めて達成困難な目標で、地方経済や中小企業に過重な負担の恐れ
2024年10月17日
-
岐路に立つ日本の人的資本形成
残業制限、転職市場の活発化、デジタル化が迫る教育・訓練の変革
2025年01月09日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
2025年度税制改正大綱解説
大綱の公表で完結せず、法案の衆議院通過まで議論が続くか
2025年01月06日
2025年の中国経済見通し
注目点は①不動産不況の行方、②トランプ2.0 vs 内需拡大
2024年12月20日
石破政権の看板政策「2020年代に最低賃金1500円」は達成可能?
極めて達成困難な目標で、地方経済や中小企業に過重な負担の恐れ
2024年10月17日
岐路に立つ日本の人的資本形成
残業制限、転職市場の活発化、デジタル化が迫る教育・訓練の変革
2025年01月09日