サマリー
◆2022年9月20・21日に開催されたFOMC(連邦公開市場委員会)では、政策金利であるFF(フェデラルファンド)レートの誘導目標レンジが、従来の2.25-2.50%から3.00-3.25%へと0.75%pt引き上げられた。7月のFOMCに引き続き、3会合連続で0.75%ptの大幅利上げとなり、FFレートの水準は2007年12月以来の高さとなった。なお、今回の0.75%ptの利上げは、市場参加者にとってサプライズとはならなかった。
◆9月のFOMCでの利上げ幅が想定通りとなったことで、最大の注目点は今後の利上げペースとなった。FOMC参加者によるFF金利予想(ドットチャート)の中央値は2022年末が4.375%、2023年末が4.625%、2024年末が3.875%、2025年末が2.875%となった。2022年に関しては残り2会合で計1.25%ptの利上げが見込まれ、2023年は計0.25%ptの利上げが予想されている。
◆今後の利上げペースに関しては、ターミナルレート(利上げフェーズの最高到達点)が市場の予想通り引き上げられた。しかし、景気・インフレともに不確実性の高い足下の状況においては、こうした中央値ベースの予想はあまり意味を有さない可能性がある。これまで、中央値は予想最大値を後追いするように切り上がり、利上げペースも加速してきた。つまり、インフレが高止まりするリスクが顕著となり、FOMCがさらにタカ派化するとなれば、FOMC参加者が予想するFF金利の最高値(2022年末は4.625%、2023年末は4.875%)が目安となる。
◆他方で、予想以上に景気悪化が進めば、ハト派に転じるFOMC参加者も出てくるだろう。FOMC参加者の実質GDP成長率の予想最低値(第4四半期)は、2022年に前年比+0.0-0.1%が4名、2023年に同▲0.3-▲0.4%が1名となっている。こうした最低値を下回るような減速の兆候が見られれば、利上げ停止や利下げが早期化する可能性がある。ただし、景気が悪化してもインフレ圧力が和らがない場合においては、FOMC参加者が一枚岩でなくなり、金融政策に対して市場が疑念を持ちやすくなる恐れがあるといえる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
米GDP 前期比年率▲0.3%とマイナスに転換
2025年1-3月期米GDP:追加関税を背景とした駆け込み輸入が下押し
2025年05月01日
-
米国の州年金基金とビットコイン現物ETF
「戦略的ビットコイン準備資産」の実現により保有ニーズが高まるか
2025年04月25日
-
「トランプ2.0」における米国金融規制の展望
~銀行システム、暗号資産ビジネスと結合か~『大和総研調査季報』2025年春季号(Vol.58)掲載
2025年04月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日