サマリー
◆金融市場では景気後退懸念が高まっている。7月末に公表予定の4-6月期の実質GDP成長率が1-3月期に引き続きマイナス成長となれば、金融市場は景気後退と捉えるだろう。もっとも、個人消費や設備投資は堅調と考えられ、金融市場が景気後退と認識したとしても、米国経済が大崩れしたとはいえないだろう。また、景気後退を判断する全米経済研究所(NBER)の基準を用いても、過去の景気後退期と比べて、各種経済指標は堅調であり、NBERも景気後退と判断するのは難しいと考えられる。
◆現状で景気後退と判断しにくいとはいえ、米国経済は景気が減速する過程にあることは確かである。インフレが終息するまではFRBの金融引き締めが維持され、タイトな金融環境が継続することで景気を下押しすることが想定される。とりわけ、利上げ開始以後、景況感は悪化傾向を強める一方でインフレ抑制効果がまだ顕在化しない間の「魔の6ヵ月」は景気後退リスクが高まりやすい。今回の利上げ局面では、2022年9月から2023年2月がこの期間に該当する。
◆また、「魔の6ヵ月」を乗り越えたとしても、楽観することはできない。5月のCPIが加速したことを理由に6月のFOMCで利上げ幅を拡大したことは、金融政策運営上の大きな転換点となり得る。FOMCがCPIを重視すれば、金融引き締めは大掛かりかつ長期化しかねない。6月のCPIの加速を基に、7月末のFOMCで利上げ幅をさらに拡大すれば、先行きに関してもFRBのタカ派化が続く可能性を示唆することになり、経済・金融の不確実性を高めることになるだろう。
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