サマリー
◆6月14・15日に開催されたFOMCでは、1994年11月以来となる0.75%ptの利上げが決定された。また、FOMC参加者のFF金利見通し(ドットチャート)では、2022年下半期も急ピッチでの利上げが継続するとの予想も示された。インフレが沈静化していく兆しが見えにくい中で、従来FOMCのタカ派化を先導してきたウォラーFRB理事のメインシナリオが崩れ、タカ派最右翼のブラード・セントルイス総裁の主張が優勢になったといえる。
◆ブラード総裁は、1994年に積極的な利上げでインフレを未然に抑制し、ソフトランディングを実現したグリーンスパン元議長の政策運営を再現しようとしているが、経済・金融環境は当時と異なる。現在はインフレが既に加速し、景気も減速期にあることから、1994年当時と比べてハードランディングの可能性は高くなり得るだろう。
◆とはいえ、大和総研は米国経済がソフトランディングを実現することは可能と捉えている。米国経済の屋台骨である個人消費は、金利動向と必ずしも連動していない。むしろ、インフレ加速が個人消費の主な下振れリスクであることを踏まえれば、利上げによってインフレが沈静化すれば、個人消費全体にはポジティブとも考えられる。加えて、豊富な家計金融資産が個人消費のバッファーになり得るだろう。
◆米国経済のハードランディングの可能性は、インフレが沈静化するまでの家計の耐久力次第といえる。個人消費のバッファーとなる家計金融資産は資産価格の変動に左右されやすくなっている点がリスク要因である。急ピッチでの金融引き締めを契機とした資本市場の不安定化が逆資産効果を生み、家計の消費行動が消極化する恐れがあるだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
米GDP 前期比年率+2.8%と加速
2024年4-6月期米GDP:内需主導での堅調さを維持
2024年07月26日
-
監査・ガバナンス強化へ回帰する英国
昨年撤回した監査強化方針を復活し、ガバナンス・コードも厳格化へ
2024年07月25日
-
女性がキャリアを築ける職場ほど、子どもを持ちやすい
健保組合ごとの被保険者・被扶養者の出生率と、その要因の多変量解析
2024年07月24日
-
GX経済移行債に期待されるインパクトレポーティング
~GXの理解醸成促進に向けて~『大和総研調査季報』2024年夏季号(Vol.55)掲載
2024年07月24日
-
盛り上がりに欠ける英国の政権交代
2024年07月26日
よく読まれているリサーチレポート
-
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
-
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
-
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日