サマリー
◆米国経済の先行きに対して、市場の懸念は強まっている。1年先OISの10年-2年スプレッドが2月に逆イールド化したことに加え、2月末からは6ヵ月先が、3月半ばからは3ヵ月先も逆イールド現象が定着しており、金融市場は近い将来に景気後退に陥ることを織り込んでいる。また、株式市場においても、S&P500のモメンタムを見ると、ISM製造業景況感指数が好不況の目安である50%を今後下回っていくことを示唆している。
◆目下の米国経済は複合的な要因による下振れリスクに直面している。ウクライナ危機を契機としたエネルギー価格の上昇やサプライチェーンの混乱によって、インフレ加速は長期化の様相を呈している。インフレ加速の長期化によって家計の実質所得が一層目減りし、個人消費を下押しする可能性がある。また、ウクライナ危機の深刻化によって、金融・株式市場が混乱すれば、逆資産効果によって個人消費を押し下げるリスクもある。テールリスクではあるが、米中対立が激化し、バイデン政権が対中制裁へと踏み切れば、現在発動している対ロ制裁に比べて、米国経済への悪影響も大きくなることが想定される。
◆そして、3月のFOMCで利上げを決定したFRBは、急ピッチでの利上げを想定している。FRBは、インフレ対策に後手に回ったとの印象を与えたくないことや、リスク管理上スタグフレーションを抑制する必要があることなどから、実際に景気が悪化してもインフレ対策を優先する可能性がある。それぞれのリスクが単発で発現した場合には、米国経済はそのショックを吸収できるかもしれないが、こうした複数のリスクが絡み合いながら景気を悪化させていく恐れがある点が最大の懸念点といえるだろう。
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