サマリー
◆2021年12月14・15日に開催されたFOMC(連邦公開市場委員会)では、政策金利であるFF(フェデラルファンド)レートの誘導目標レンジを、0.00-0.25%に据え置いた。他方、11月のFOMCで公表されたテーパリング(国債等の買入額の減額)に関しては、減額幅を倍増(1ヵ月当たり150億ドル→300億ドルの減額)することを決定した。今回のFOMCで決定した減額幅に基づけば、2022年3月半ばにテーパリングが終了することになる。インフレ加速の長期化懸念が高まる中で、テーパリングを早期に終わらせることで、2022年内の利上げの実施に向けた裁量を確保することが目的と言える。
◆注目される今後の利上げスケジュールに関しては、FOMC参加者によるFFレートの見通し(ドットチャート)において、2022年は3回、2023年は3回、2024年は2回の計8回が示された。2022年に3回の利上げはやや前のめり感があるが、計8回は市場参加者にとっても想定の範囲内であろう。FOMC参加者は、2022年の米国経済が堅調に推移する中で、利上げフェーズへと移行することをベースシナリオとしている。こうした「通常」の利上げであれば、FRBにとって判断は難しくない。しかし、新型コロナウイルスのオミクロン株の登場は、景気の下押し要因となる一方で、サプライチェーンの混乱を助長し、インフレ加速を一層長期化させ得る。こうしたリスクシナリオでの利上げはFRBの決断を難しいものにするだろう。利上げへの扉が無事開いたことはよかったものの、2022年の金融政策運営はいばらの道となるかもしれない。
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