サマリー
◆2021年9月21・22日に開催されたFOMC(連邦公開市場委員会)では、政策金利であるFF(フェデラルファンド)レートの誘導目標レンジを、0.00-0.25%に据え置き、バランスシート政策も変更しなかった。今回の決定自体にサプライズはない。
◆注目されていたテーパリングに関しては、「すぐに正当化される可能性がある」との表現が声明文に加えられたことで、11月のFOMCで公表される可能性が高まった。テーパリングの実施に向けた物価・雇用に関する条件は概ね満たしている。他方で、かく乱要因としては、債務上限問題やつなぎ予算を巡る政治の駆け引きが挙げられる。
◆もう一つの注目点であった、ドットチャートに関しては、2022年が0.5回、2023年が3回、2024年が3回と計6.5回分の利上げが予想されるタカ派的な結果となった。景気は減速、インフレは高止まりするなど、スタグフレーション懸念が強まる中で、利上げ予想が増えたことは、FRBがインフレ対応を優先する「インフレファイター」としての性格を強めた結果とも捉えられる。
◆近い将来である2022年の利上げに関しては、据え置き予想のFOMC参加者が1名利上げ予想へと変化すれば、ドットチャートの中央値では1回分の利上げ予想となる。また、2022年のFOMC投票権はタカ派とハト派が二分化するため、意見調整が難しくなる。市場参加者にとっても解釈の余地が生まれやすい中で、いかにコミュニケーションによって混乱なく金融政策の正常化を進めていくか、FRBにとって困難はこれからといえる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
非農業部門雇用者数は前月差+13.9万人
2025年5月米雇用統計:緩やかな悪化に留まっていることを示唆
2025年06月09日
-
米国経済見通し 米中デタントも、景気は減速へ
財政悪化と学生ローン政策の変更が景気を一層減速させるリスク要因
2025年05月23日
-
FOMC 様子見姿勢を強調
景気・インフレに加え、金融環境の変化が利下げのタイミングを左右
2025年05月08日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日