サマリー
◆米国では、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴って急増した失業者が、雇用主提供の医療保険をも失う事態に直面している。ただし、失業したとしても、転職や退職時のポータビリティが認められている医療貯蓄口座を保有している場合は、医療支出向けに積み立てた口座資産を失うことはない。
◆国民皆保険制度が存在しない米国では、医療費の支払いに自ら備える自助の仕組みとして医療貯蓄口座の口座数と資産規模の拡大が続いている。高免責医療保険に加入することで開設資格が与えられる医療貯蓄口座は、非課税枠を利用した長期積み立てが可能な仕組みでもある。制度が開始されて以降、近年は残高に占める投資資産(投資信託等)の割合が上昇している。
◆医療貯蓄口座と組み合わせる高免責医療保険は、保険でカバーされない免責額が大きく自己負担が高額となることから、医療費を抑制する効果が期待されるが、医療貯蓄口座への十分な拠出がなければ医療費の備えが不十分となる点に留意が必要である。
◆公的に国民皆保険制度が敷かれる日本でも、今後は健康を維持することや医療費の負担について自助の重要性がこれまで以上に増すと考えられる。米国と日本の医療保険制度は異なるが、米国の医療貯蓄口座の考え方や動向は参考となるだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
米GDP 前期比年率▲0.3%とマイナスに転換
2025年1-3月期米GDP:追加関税を背景とした駆け込み輸入が下押し
2025年05月01日
-
米国の州年金基金とビットコイン現物ETF
「戦略的ビットコイン準備資産」の実現により保有ニーズが高まるか
2025年04月25日
-
「トランプ2.0」における米国金融規制の展望
~銀行システム、暗号資産ビジネスと結合か~『大和総研調査季報』2025年春季号(Vol.58)掲載
2025年04月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日