サマリー
◆2020年1月の非農業部門雇用者数は前月差+22.5万人となり、市場予想(Bloomberg調査:同+16.5万人)を大きく上回るポジティブな結果となった。今回の公表に当たり、事業所調査の年次ベンチマーク変更及び季節調整替えが行われたが、2019年は1-4月が下方修正された一方で、5月以降は8月を除いて上方修正された。2019年後半以降、雇用者数は堅調なペースを維持しているといえる。
◆家計調査による2020年1月の失業率は前月から+0.1%pt上昇し、3.6%と市場予想を上回った。失業率が上昇したとはいえ歴史的低水準圏で推移していることや、労働参加率も上昇したことを踏まえれば、ポジティブに捉えるべきである。賃金の動向に関して、2020年1月の民間部門の平均時給は前月比+0.2%と、市場予想(Bloomberg調査:同+0.3%)を下回るも、2019年12月に比べて伸びは加速した。
◆2020年1月の雇用統計を総じてみれば、雇用者数の大幅な増加、賃金上昇率の再加速、歴史的低水準圏で推移する失業率、と3拍子揃ったポジティブな結果であったといえる。こうした良好な雇用環境は個人消費が主導する米国経済の自律的な成長をサポートすると期待できよう。
◆堅調な雇用環境を喜ぶべきだが、マーケットは利下げ可能性を低下させ得ると考え、落胆したようだ。新型コロナウイルスに伴う世界経済の下振れリスクは、FRBも認識しており、米国経済への悪影響が甚大であれば、FRBは利下げを決断すると考えられる。しかし、足元の米国経済の底堅さや、資産価格のバリュエーション上昇といった利下げの副作用を踏まえれば、FOMC参加者は現状維持が基本スタンスだろう。利下げに対する過度な期待は禁物である。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
非農業部門雇用者数は前月差+13.9万人
2025年5月米雇用統計:緩やかな悪化に留まっていることを示唆
2025年06月09日
-
米国経済見通し 米中デタントも、景気は減速へ
財政悪化と学生ローン政策の変更が景気を一層減速させるリスク要因
2025年05月23日
-
FOMC 様子見姿勢を強調
景気・インフレに加え、金融環境の変化が利下げのタイミングを左右
2025年05月08日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日