サマリー
◆2019年11月の非農業部門雇用者数は前月差+26.6万人となり、市場予想(Bloomberg調査:同+18.0万人)を大幅に上回る結果であった。今回の雇用統計に関してはGM(ゼネラルモーターズ)従業員4.6万人によるストライキの終了に伴う反動増が見込まれていたが、その反動増の影響を除いても市場参加者が意識する+20万人を超えるポジティブサプライズとなった。
◆家計調査による11月の失業率は3.5%と、市場予想(Bloomberg調査:3.6%)よりも0.1%pt低い結果となった。賃金の動向に関して、11月の民間部門の平均時給は前月比+0.2%となり、市場予想(Bloomberg調査:同+0.3%)を下回る結果となった。ただし、10月分の上方修正(同+0.2%→同+0.4%)も合わせて見れば、まずまずの結果と言える。
◆11月の雇用統計は、総じてみれば雇用環境の悪化懸念を払しょくする内容であった。他方で、歴史的低失業率が続く中、雇用者数が伸びにくい状況にあることに変わりはない。労働参加率の上昇といった雇用のすそ野の広がりや、賃金の上昇ペースの加速が期待されている一方で、非労働力人口が増加したことや、「自発的失業」に見る賃金上昇圧力が和らいでいることは、今後の留意点である。
◆雇用統計のポジティブな結果に加え、同日発表された12月のロイター/ミシガン大消費者センチメント(速報値)も4ヵ月連続で改善したことから、米国経済をけん引する個人消費は堅調に推移していくという構図に変わりはない。米中貿易摩擦といった下振れリスクはくすぶり続けるものの、12月10・11日に予定されるFOMC(連邦公開市場委員会)では政策金利が据え置かれる公算は大きいと考える。
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