サマリー
◆米中間の通商協議は深刻化、長期化の様相を呈している。トランプ政権は、昨年12月から延期されてきた2,000億ドル規模の輸入品に対する追加関税率の引き上げ(10%→25%)を5月10日から実施し、さらに現在中国に対して追加関税を課していない輸入品、およそ3,000億ドル規模に対する追加関税第4弾実施に向けた手続きを開始した。
◆5月10日からの追加関税率が引き上げられた中国製品の輸入金額が米国全体の輸入金額に占める割合は8.4%であり、15%ptの関税率の引き上げを単純に計算すれば輸入コストを1.3%程度押し上げることになる。また、仮に追加関税第4弾が実施されれば、輸入コストはそこからさらに2.6%程度押し上げられると試算される。
◆ただし、中国への追加関税が導入された2018年以降、中国からの主力輸入品であるコンピューター・電子部品の輸入が減少する一方、ベトナム、台湾からの輸入が急増している。また、2018年以降、輸入浸透度も低下傾向にあり、企業はサプライチェーンの再編によって、追加関税によるコスト増を軽減していることが示唆される。今回の追加関税率の引き上げは、こうした企業によるサプライチェーン再編の動きを一層加速させる可能性が高い。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
米国、設備投資費用の即時償却を復活・拡張
製造業・情報産業の新規投資、及び対米直接投資の増加要因か
2025年10月07日
-
米国経済見通し 利下げ再開後の注目点は?
景気下振れリスクが懸念される時こそ、インフレ動向を注視すべき
2025年09月24日
-
FOMC 0.25%ptの利下げを決定
先行きの利下げペースに関しては予想がばらつく
2025年09月18日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日