米国経済見通し 貿易摩擦下での構造変化

追加関税の拡大によってサプライチェーンの再編が加速する可能性

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2019年05月24日

  • ロンドンリサーチセンター シニアエコノミスト(LDN駐在) 橋本 政彦

サマリー

◆米中間の通商協議は深刻化、長期化の様相を呈している。トランプ政権は、昨年12月から延期されてきた2,000億ドル規模の輸入品に対する追加関税率の引き上げ(10%→25%)を5月10日から実施し、さらに現在中国に対して追加関税を課していない輸入品、およそ3,000億ドル規模に対する追加関税第4弾実施に向けた手続きを開始した。

◆5月10日からの追加関税率が引き上げられた中国製品の輸入金額が米国全体の輸入金額に占める割合は8.4%であり、15%ptの関税率の引き上げを単純に計算すれば輸入コストを1.3%程度押し上げることになる。また、仮に追加関税第4弾が実施されれば、輸入コストはそこからさらに2.6%程度押し上げられると試算される。

◆ただし、中国への追加関税が導入された2018年以降、中国からの主力輸入品であるコンピューター・電子部品の輸入が減少する一方、ベトナム、台湾からの輸入が急増している。また、2018年以降、輸入浸透度も低下傾向にあり、企業はサプライチェーンの再編によって、追加関税によるコスト増を軽減していることが示唆される。今回の追加関税率の引き上げは、こうした企業によるサプライチェーン再編の動きを一層加速させる可能性が高い。

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