サマリー
◆2018年4月の非農業部門雇用者数は前月差+16.4万人となり、前月から増加幅が拡大したものの、市場予想(Bloomberg調査:同+19.2万人)には届かなかった。しかし、過去分に関して、2ヵ月合計で+3.0万人上方修正されたことも踏まえると、均してみた雇用者数の増加ペースは概ね想定の範囲内と言える。
◆家計調査による4月の失業率は前月差▲0.2%ptと6ヵ月ぶりに低下、2000年12月以来の低水準である3.9%となった。今回、失業率が低下する要因となったのは非労働力人口が大幅に増加したことであり、必ずしも良い内容とは言えない。だが、失業率が長期的に見て低い水準まで低下しているという事実に変わりはなく、労働需給が非常にひっ迫した状態にあるという評価自体を改めさせるものではないだろう。
◆4月の民間部門の平均時給は、前月から4セント上昇、前月比+0.1%となり、市場予想(同+0.2%)を下回った。また、前月分が下方修正されたこともあり、前年比変化率も+2.6%と市場予想(前年比+2.7%)に届かなかった。賃金は底堅い上昇が続いているとも評価できる一方、今回、失業率が低下したことに照らすと、やや物足りない結果であった。
◆労働市場の先行きとしては、高水準を維持する企業マインドを背景に雇用者数の増加基調が続くと考えられる。ただし、企業部門を取り巻く環境として、原油価格の上昇や関税の導入などを背景とした仕入価格の上昇に対する懸念が高まっていることには留意が必要であろう。通商政策の進展次第ではコスト増による企業収益の下押しは今後一層深刻になるとみられ、採用意欲の低下につながる可能性があろう。
◆今回の雇用統計がFRB(連邦準備制度理事会)の金融政策に与える影響は軽微と考えられる。賃金上昇率についてはやや物足りない結果となったが、2%近辺でインフレ率が安定的に推移することを目指すFRBにとって、インフレ率が既に2%に達する中での賃金のさらなる加速は必ずしも望ましいとは限らない。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
米GDP 前期比年率▲0.3%とマイナスに転換
2025年1-3月期米GDP:追加関税を背景とした駆け込み輸入が下押し
2025年05月01日
-
米国の州年金基金とビットコイン現物ETF
「戦略的ビットコイン準備資産」の実現により保有ニーズが高まるか
2025年04月25日
-
「トランプ2.0」における米国金融規制の展望
~銀行システム、暗号資産ビジネスと結合か~『大和総研調査季報』2025年春季号(Vol.58)掲載
2025年04月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日