サマリー
◆2018年3月20日~21日に開催されたFOMC(連邦公開市場委員会)では、政策金利であるFF(フェデラルファンド)レートの誘導目標レンジを、従来の1.25-1.50%から0.25%pt引き上げ、1.50-1.75%とすることが決定された。金融市場では、今回の会合での利上げが確実視されていたため、決定内容にサプライズはない。
◆声明文における経済全体の現状認識は「労働市場の改善が続き、経済活動は緩やかなペースで拡大している」とされ、前回会合の声明文から幾分トーンダウンする表現となった。他方で、経済見通しの冒頭の部分には、「経済見通しはここ数ヵ月で強まった」という一文が追加され、先行きについては以前よりも強気の内容になった。
◆今回公表されたFOMC参加者による経済見通しでは、声明文でも言及された通り、実質GDP成長率見通しが上方修正された。また、失業率の見通しについても、総じて前回見通しから低下(改善)した。インフレ率に対する見方も、前回見通しから上方修正されたが、GDP成長率、失業率に比べて、PCE価格指数の修正幅は小幅であり、フィリップスカーブに対する見方は以前よりも慎重になったと解釈できる。
◆FOMC参加者の政策金利の見通し(ドットチャート)では、2018年末の中央値は2.125%と2017年12月時点の見通しから変わらず、2018年内に3回(今回の利上げに加えて、年内にあと2回)の利上げを見込む結果となった。ただし、2018年に4回以上の利上げを見込む参加者は7名に増加し、年内に3回の利上げを主張する参加者の数(6名)を上回った。
◆今後の利上げペース(2018年に3回なのか4回なのか)に関しては、FOMC参加者内でも意見が分かれており、明確な示唆は得られなかった。利上げ継続自体は既定路線であるが、FOMC参加者はあくまで経済指標次第で利上げのタイミングを見極めていくとみられる。インフレ動向に加えて、税制改革の効果の見極めが焦点になろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
非農業部門雇用者数は前月差+2.2万人
2025年8月米雇用統計:雇用環境の悪化が継続し、利下げが近づく
2025年09月08日
-
米国経済見通し 景気下振れの懸念強まる
雇用環境が悪化傾向を示す中、屋台骨の個人消費は楽観しづらい
2025年08月22日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日