サマリー
◆2017年10月31日~11月1日に開催されたFOMC(連邦公開市場委員会)では、政策金利であるFF(フェデラルファンド)レートの誘導目標レンジを、従来通りの1.00-1.25%で据え置くことが決定された。今回のFOMCでは金融政策の変更はないというのが事前の市場コンセンサスとなっていたため、決定内容にサプライズはない。
◆今回公表された声明文での最大の変更点は、経済全体の現状認識が上方修正されたことである。経済の現状認識は、「ハリケーンによる混乱にもかかわらず、経済活動は底堅く拡大している」とされ、成長ペースが上方修正される形となった。これは主に7-9月期のGDPが好調な結果となったことを受けたものとみられる。
◆12月12日~13日に開催される次回のFOMCでは、追加利上げが決定される公算が大きい。9月のFOMCで示されたドットチャートでは、2017年にもう1回の利上げが見込まれていたが、今回の声明文で経済全体の認識が上方修正されたことにも表れているように、FOMC参加者による9月時点の想定以上に米国経済は堅調に推移している。
◆2018年以降の利上げペースについては、インフレ率の動向が最大のポイントとなる。失業率は既にFOMC参加者の長期見通しを下回る水準まで低下する一方で、インフレ率についてはFRBの目標である2%を下回った状態が続いている。ただし、FOMC参加者内では資産価格の上昇に対する警戒感が高まっており、FOMC参加者がバブル的であると判断した場合には、インフレ率が加速しなくとも引き締めを急ぐ可能性がある。
◆注目される次期FRB議長に、最有力候補と目されるパウエル理事が就任した場合、緩やかなペースでの利上げを行っていくという、これまでと同様の金融政策運営が踏襲されることになろう。ただし、現在、FRB理事には副議長を含む3つの空席があり、新たな理事にどのような人物が指名されるかによって、金融政策の方向性は変わり得る。共和党は伝統的に、FRBの権限縮小に対して前向きであり、テイラー・ルールのような、ルールに基づく政策運営を志向する人物が理事に指名される可能性も十分に考えられよう。次期議長の指名後も人事動向を注視していく必要がある。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
米国、設備投資費用の即時償却を復活・拡張
製造業・情報産業の新規投資、及び対米直接投資の増加要因か
2025年10月07日
-
米国経済見通し 利下げ再開後の注目点は?
景気下振れリスクが懸念される時こそ、インフレ動向を注視すべき
2025年09月24日
-
FOMC 0.25%ptの利下げを決定
先行きの利下げペースに関しては予想がばらつく
2025年09月18日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日