サマリー
◆2017年6月の非農業部門雇用者数は前月差+22.2万人と前月から増加幅が拡大、市場予想(Bloomberg調査:同+17.8万人)を上回った。過去分についても4月分、5月分ともに上方修正され、非農業部門雇用者数増減の3ヵ月移動平均は同+19.4万人と4ヵ月ぶりに増加幅が拡大しており、雇用者数の伸びは堅調な状況が続いている。
◆6月の失業率は、横ばいを見込んでいた市場予想に反して、前月差+0.1%ptと5ヵ月ぶりに上昇し、4.4%となった。失業率変化の内訳を見ると、労働参加率が同+0.1%ptと3ヵ月ぶりに上昇したことが失業率を押し上げており、失業率の上昇を悲観的に捉える必要はないと考えられる。ただし、失業者数の増加を踏まえれば決して良い内容ではなく、総じて見れば労働市場の改善は足踏みした結果であったと言える。
◆6月の民間部門の平均時給は前月から4セント上昇、前月比+0.2%と前月の同+0.1%から加速したが、市場予想(同+0.3%)を下回った。前年比変化率は+2.5%と4ヵ月ぶりに上昇幅が拡大したものの、こちらも市場予想(同+2.6%)を下回った。前年比変化率は直近のピークである2016年12月の+2.9%を依然下回っており、労働需給がひっ迫する中でも賃金上昇は勢いを欠いている。
◆失業率は以前からFOMCメンバーが考える長期見通しを下回って推移しており、金融政策の先行きを見通す上での主な焦点はインフレ動向にある。潜在的なインフレ圧力となる賃金上昇率がわずかに加速したとはいえ、このところ鈍化するインフレ率の再加速を確信させるほどの強さはなかったことから、今回の結果が早期に追加引き締めを行う決定打とはならないだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
米国経済見通し 関税政策はマイルド化へ
トランプ大統領に対する世論と共和党内の不満の高まりが抑止力に
2025年11月25日
-
政府閉鎖前の雇用環境は緩やかな悪化が継続
2025年9月米雇用統計:雇用者数は増加に転じるも、回復は緩やか
2025年11月21日
-
統計公表停止中、米雇用環境に変化はあるか
足元は悪化基調が継続も、先行きは悪化一辺倒ではない
2025年11月14日
最新のレポート・コラム
-
他市場にも波及する?スタンダード市場改革
少数株主保護や上場の責務が問われると広範に影響する可能性も
2025年12月03日
-
消費データブック(2025/12/2号)
個社データ・業界統計・JCB消費NOWから消費動向を先取り
2025年12月02日
-
「年収の壁」とされる課税最低限の引上げはどのように行うべきか
基礎控除の引上げよりも、給付付き税額控除が適切な方法
2025年12月02日
-
2025年7-9月期法人企業統計と2次QE予測
AI関連需要の高まりで大幅増益/2次QEでGDPは小幅の下方修正へ
2025年12月01日
-
ビットコイン現物ETFとビットコイントレジャリー企業株式
2025年12月05日

