力強い雇用者数の伸びと、緩慢な賃金上昇

2017年6月米雇用統計:早期の金融引き締めの決定打とはならず

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2017年07月10日

  • ロンドンリサーチセンター シニアエコノミスト(LDN駐在) 橋本 政彦

サマリー

◆2017年6月の非農業部門雇用者数は前月差+22.2万人と前月から増加幅が拡大、市場予想(Bloomberg調査:同+17.8万人)を上回った。過去分についても4月分、5月分ともに上方修正され、非農業部門雇用者数増減の3ヵ月移動平均は同+19.4万人と4ヵ月ぶりに増加幅が拡大しており、雇用者数の伸びは堅調な状況が続いている。


◆6月の失業率は、横ばいを見込んでいた市場予想に反して、前月差+0.1%ptと5ヵ月ぶりに上昇し、4.4%となった。失業率変化の内訳を見ると、労働参加率が同+0.1%ptと3ヵ月ぶりに上昇したことが失業率を押し上げており、失業率の上昇を悲観的に捉える必要はないと考えられる。ただし、失業者数の増加を踏まえれば決して良い内容ではなく、総じて見れば労働市場の改善は足踏みした結果であったと言える。


◆6月の民間部門の平均時給は前月から4セント上昇、前月比+0.2%と前月の同+0.1%から加速したが、市場予想(同+0.3%)を下回った。前年比変化率は+2.5%と4ヵ月ぶりに上昇幅が拡大したものの、こちらも市場予想(同+2.6%)を下回った。前年比変化率は直近のピークである2016年12月の+2.9%を依然下回っており、労働需給がひっ迫する中でも賃金上昇は勢いを欠いている。


◆失業率は以前からFOMCメンバーが考える長期見通しを下回って推移しており、金融政策の先行きを見通す上での主な焦点はインフレ動向にある。潜在的なインフレ圧力となる賃金上昇率がわずかに加速したとはいえ、このところ鈍化するインフレ率の再加速を確信させるほどの強さはなかったことから、今回の結果が早期に追加引き締めを行う決定打とはならないだろう。

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