サマリー
◆アメリカのトランプ大統領は国内の雇用拡大を目指しており、その一環として貿易赤字額の大きさを問題視している。1990年代以降、巨額な貿易赤字が続いているが、その主因は対中貿易赤字の拡大である。対日貿易赤字は安定的に推移している。
◆国内の雇用は全体で見ると増加しているが、製造業に限れば減少が続いており、特に2000年代の減少ペースが著しい。アメリカ企業の海外売上高比率は2000年代に上昇しており、製造業の雇用の減少とタイミングが合う。
◆しかし、先行研究では企業の海外進出が必ずしも国内雇用を減らすわけではないことが示されている。そこで、本稿では製造業の雇用減少の要因の一つとしてIT化の進展に着目した。
◆アメリカ国内の製造業をIT利用度によって分類し、それぞれの労働生産性の伸び率、労働投入、雇用者数の変化を確認。結果、IT利用産業は労働生産性の伸び率が高く、ITの利用が労働投入、雇用者数の抑制に寄与している可能性が示された。
◆今後もITの利用は拡大すると考えられ、製造業の国内回帰を促しても製造業における雇用の増加は限定的となる可能性が指摘できる。ITの利用に伴う新たな価値創造に目を向け、技術革新の促進を通じたアメリカ国内の付加価値増大による内需押上げが、長期的な経済成長を目指すうえで重要となるだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
-
中国経済:2023年の回顧と2024年の見通し
24年の成長率目標は5%か?達成の鍵は民営企業へのサポート強化
2023年12月21日
-
2024年の米国経済見通し
①個人消費の腰折れ、②インフレ率の高止まり、③政治の停滞がリスク
2023年12月21日
-
2024年度税制改正大綱解説
定額減税は経済対策としては疑問だが、インフレ調整策としては有効
2023年12月25日
-
四半期報告書の廃止に関する改正法の成立
四半期報告書が廃止された後の四半期決算短信の内容は?
2023年12月04日
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
中国経済:2023年の回顧と2024年の見通し
24年の成長率目標は5%か?達成の鍵は民営企業へのサポート強化
2023年12月21日
2024年の米国経済見通し
①個人消費の腰折れ、②インフレ率の高止まり、③政治の停滞がリスク
2023年12月21日
2024年度税制改正大綱解説
定額減税は経済対策としては疑問だが、インフレ調整策としては有効
2023年12月25日
四半期報告書の廃止に関する改正法の成立
四半期報告書が廃止された後の四半期決算短信の内容は?
2023年12月04日