サマリー
◆11月8日、米大統領選が行われ、次期大統領として共和党候補の実業家ドナルド・トランプ氏の就任が決定した。本稿では、トランプ氏が公約で、廃止し、新たなヘルスケアプランに置き換える(repeal and replace Obamacare)としていた医療保険改革法(The Patient Protection and Affordable Care Act of 2010、以下、オバマケア)を含む医療政策について、現時点で考えられる今後の動きや課題を整理する。
◆トランプ氏は大統領就任後、短期間のうちに、オバマケアを撤廃するとしているが、財政と直接関連しない多くの部分についての改正は難しく、オバマケア全体に大きな修正が加えられる可能性は低いだろう。特に、一般に保険購入が容易でないと考えられる人の保険加入のハードルを下げるなど、皆保険の方向性については残す方針のようだ。
◆その一方、オバマ政権下で拡大していた政府の役割を縮小し、市場を重視した医療への移行を目指すとしているが、個々の政策については課題も少なくない。
◆単純なオバマケア撤廃だけでも、今後10年間(2016年度~2025年度)の財政赤字への影響は、合計3,530億ドルの拡大になると、2015年に米議会予算局(CBO)は試算している。トランプ氏が主張する市場を重視した改革によっても、医療費の抑制は容易ではないと思われる。
◆しかしながら、トランプ氏が、共和党主流派が掲げる改革に止まらず、ユニバーサルカバレッジの実現と並行して、公正な競争環境や医療の質を保証する規制の整備など、政府の適切な関与が行われるような改革にまで踏み込めば、米国医療制度は大きな転機を迎えることになるかもしれない。現実には、共和党との調整など難しい面は多いだろうが、トランプ次期大統領の、医療制度改革に対する本気度と、財政運営に対する手腕が問われよう。
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