サマリー
◆2016年10月の非農業部門雇用者数は前月差+16.1万人となり、市場予想(同+17.3万人)を下回った。しかし、過去分に関して8月分、9月分がいずれも上方修正され、2ヵ月合計で+4.4万人の上方修正になったことを併せて考えれば、むしろ良好な結果であったと言える。十分底堅いペースでの増加が続いていると評価できよう。
◆10月の失業率は前月から▲0.1%pt低下の4.9%となり、市場予想通りの結果となった。失業者数は前月から減少したものの、就業者数が前月差▲4.3万人減少した。他方で非労働力人口が大幅に増加しており、失業者が労働市場から退出したことで失業率が押し下げられた。労働参加率、就業率は前月から低下し、失業率の低下というヘッドラインから受ける印象ほど良好な結果とは言えない。
◆しかし、失業者や就業者の状況に関しては、総じて改善が進む結果となった。失業者数の内訳を失業理由別に見ると、会社都合による「非自発的失業」の減少が失業者数を押し下げた。また、就業者のうち、経済的理由によるパートタイム就業者も、わずかながら前月から減少した。
◆10月の民間部門の平均時給は前月から10セント増加、前月比+0.4%と2016年1月以来の高い伸びとなり、市場予想(同+0.3%)を上回った。また、平均時給の前年比変化率は+2.8%と前月の同+2.7%から加速し、2009年6月以来の高い伸びを記録した。賃金上昇率が着実に高まっていることを確認させるポジティブな結果であった言える。
◆賃金上昇率に加速が見られたことは、基調的なインフレ率を押し上げる要因になるため、FRB(連邦準備制度理事会)にとって追加利上げを後押しする材料となるだろう。次回、12月13日~14日のFOMC(連邦公開市場委員会)までには、雇用統計がもう1回公表されるため、その結果を待つ必要があるものの、今回の結果を受けて12月利上げの確率は一層高まったと考えられる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
米GDP 前期比年率▲0.3%とマイナスに転換
2025年1-3月期米GDP:追加関税を背景とした駆け込み輸入が下押し
2025年05月01日
-
米国の州年金基金とビットコイン現物ETF
「戦略的ビットコイン準備資産」の実現により保有ニーズが高まるか
2025年04月25日
-
「トランプ2.0」における米国金融規制の展望
~銀行システム、暗号資産ビジネスと結合か~『大和総研調査季報』2025年春季号(Vol.58)掲載
2025年04月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日