時給は2009年以来の高い伸び

2016年10月米雇用統計:雇用者数の伸びは減速も、十分底堅い

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2016年11月07日

  • ロンドンリサーチセンター シニアエコノミスト(LDN駐在) 橋本 政彦

サマリー

◆2016年10月の非農業部門雇用者数は前月差+16.1万人となり、市場予想(同+17.3万人)を下回った。しかし、過去分に関して8月分、9月分がいずれも上方修正され、2ヵ月合計で+4.4万人の上方修正になったことを併せて考えれば、むしろ良好な結果であったと言える。十分底堅いペースでの増加が続いていると評価できよう。


◆10月の失業率は前月から▲0.1%pt低下の4.9%となり、市場予想通りの結果となった。失業者数は前月から減少したものの、就業者数が前月差▲4.3万人減少した。他方で非労働力人口が大幅に増加しており、失業者が労働市場から退出したことで失業率が押し下げられた。労働参加率、就業率は前月から低下し、失業率の低下というヘッドラインから受ける印象ほど良好な結果とは言えない。


◆しかし、失業者や就業者の状況に関しては、総じて改善が進む結果となった。失業者数の内訳を失業理由別に見ると、会社都合による「非自発的失業」の減少が失業者数を押し下げた。また、就業者のうち、経済的理由によるパートタイム就業者も、わずかながら前月から減少した。


◆10月の民間部門の平均時給は前月から10セント増加、前月比+0.4%と2016年1月以来の高い伸びとなり、市場予想(同+0.3%)を上回った。また、平均時給の前年比変化率は+2.8%と前月の同+2.7%から加速し、2009年6月以来の高い伸びを記録した。賃金上昇率が着実に高まっていることを確認させるポジティブな結果であった言える。


◆賃金上昇率に加速が見られたことは、基調的なインフレ率を押し上げる要因になるため、FRB(連邦準備制度理事会)にとって追加利上げを後押しする材料となるだろう。次回、12月13日~14日のFOMC(連邦公開市場委員会)までには、雇用統計がもう1回公表されるため、その結果を待つ必要があるものの、今回の結果を受けて12月利上げの確率は一層高まったと考えられる。

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