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財政依存度が高まる米国医療保険制度

高齢化や高額の処方薬が影響する大統領選後のオバマケア

2016年11月01日

政策調査部 研究員 石橋 未来

サマリー

◆2010年3月にオバマ政権のもと無保険者の削減や医療費の抑制を目指して成立した医療保険改革法(The Patient Protection and Affordable Care Act of 2010、以下、オバマケア)の現状、また、オバマケアに対する民主党候補ヒラリー・クリントン氏と共和党候補ドナルド・トランプ氏のスタンスの違いを整理し、大統領選の結果が医療政策や米国経済に与える影響について考察したい。


◆オバマケアによって米国の無保険者は減少したが、新たな保険加入者の増加が影響し、医療費とそれに伴う保険料は引き続き増加傾向にある。2014年の医療費は前年比5.3%増の3兆ドル超と、4年ぶりに増加ペースが加速している。また、2010年から2015年までの5年間で物価全体が10%上昇、賃金の上昇率が9%にとどまる中、医療保険料は27%も上昇している。


◆こうした状況にあるオバマケアについて、維持する、のみならずさらに強化を図るとしているのが民主党候補のクリントン氏であり、一方、廃止して新たなヘルスケアプランに置き換えるとしているのが共和党候補のトランプ氏である。ただし、俯瞰すれば、両候補の医療政策とも、医療費や保険料の高騰を問題視しており、これらを解消していくという方向性に違いはない。その方法として、クリントン氏が連邦政府の役割を増す方針であるのに対し、トランプ氏は自助に任せ、政府の影響を最小限にとどめるという方針の違いがある。


◆情報の非対称性が存在する医療保険については、従来の民間主導の改革によって、競争市場がうまく機能していくとは考え難い。そのため、クリントン氏が主張するように、保険市場で購入可能な公的医療保険を創設するなど、ある程度公的関与を強める方が、継続的に無保険者を削減しつつ医療費の高騰を緩和する効果があるようにも思われる。ただし、財政的な問題がネックとなろう。医療についても個人の選択や結果の責任を重視してきた米国が、こうした改革コストを受け入れていけるのかが注目される。

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