サマリー
◆2016年9月20日~21日に開催されたFOMC(連邦公開市場委員会)では、政策金利であるFF(フェデラルファンド)レートの誘導目標レンジを0.25-0.50%で維持する決定が行われた。足下では軟調な経済指標が散見され、今回のFOMCでは利上げが見送られるという見方が市場では優勢であったため、政策金利の据え置きは想定通りである。決定に際しての投票では、0.25%ptの利上げをすべきとの反対票が3票投じられた。
◆声明文における経済の現状認識は「経済活動の拡大は今年前半に見られた緩やかなペースから加速した」とされ、前回声明文から上方修正された。また、経済の先行きに関しても、上振れと下振れリスクが均衡したことが示された。
◆利上げを決定しなかった理由に関して、FOMC後の会見では、インフレ率は目標を下回っており、労働市場にも一層の改善の余地があるためと説明された。また、利上げ賛成派が懸念しているとみられる商業用不動産などでのバブルの可能性を認めつつも、経済はそれほど過熱しておらず、金融政策が後手に回るリスクは小さいとされた。
◆FOMC参加者の政策金利の見通しを見ると、2016年末の中央値は0.625%となり、年内に1回の利上げを見込んでいる。見通し提出者17人のうち、14人は年内に少なくとも1回の利上げを支持している。一方、2017年は2回の利上げが見込まれ、前回見通しから利上げペースは緩やかになった。
◆2016年内には11月と12月の2回のFOMCが予定されているが、選挙直前であることに鑑みると11月FOMCでの利上げの可能性は低いと考えられ、大和総研では12月の追加利上げを見込む。利上げに踏み切るための「さらなる証拠」として必要と考えられるインフレ率は、エネルギー価格による下押しの剥落で今後加速する公算が大きい。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
非農業部門雇用者数は前月差+13.9万人
2025年5月米雇用統計:緩やかな悪化に留まっていることを示唆
2025年06月09日
-
米国経済見通し 米中デタントも、景気は減速へ
財政悪化と学生ローン政策の変更が景気を一層減速させるリスク要因
2025年05月23日
-
FOMC 様子見姿勢を強調
景気・インフレに加え、金融環境の変化が利下げのタイミングを左右
2025年05月08日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日