雇用の伸びが失速、6月利上げは見送りへ

2016年5月米雇用統計:失業率の低下も労働参加率の低下が主因

RSS

2016年06月06日

  • ロンドンリサーチセンター シニアエコノミスト(LDN駐在) 橋本 政彦

サマリー

◆2016年5月の非農業部門雇用者数は前月差+3.8万人となり、市場予想(Bloomberg調査:同+16.0万人)を大きく下回る非常に失望的な結果となった。事前に見込まれていた通り、米国大手通信業者ベライゾンのストライキの影響がサービス部門の雇用者数を押し下げたが、その影響を除いても雇用の伸びは失速した。


◆5月の失業率は前月から▲0.3%pt低下の4.7%となり、予想外に失速した非農業部門雇用者数とは対照的に、市場予想(Bloomberg調査:4.9%)を上回る改善となった。しかし、失業率低下の主な要因は非労働力人口増加(労働力人口の減少)であり、内容は決して良くない。


◆民間部門の平均時給は前月から5セント上昇、前月比+0.2%と、市場予想(Bloomberg調査:同+0.2%)通りの結果となった。前年比変化率は+2.5%と前月と同じ伸びとなり、賃金は安定的な増加基調が続いているものの、目立った加速感は見られていない。


◆5月の雇用統計は、雇用者数の伸びは急失速し、労働参加率も低下するなど、総じてネガティブな結果となった。しかし、先行きについては労働市場の緩やかな改善が続くと見込む。減速しつつも雇用者数は増加しており、賃金も着実に上昇していることから、マクロベースの所得は増加が続いている。底堅い所得環境を背景に個人消費の増加基調が継続する見通しであり、個人消費がサービス業を中心に雇用を誘発するという好循環は先行きも継続するだろう。


◆今回の雇用統計の結果を受けて、FRB(連邦準備制度理事会)が6月のFOMC(連邦公開市場委員会)で次回の追加利上げを行う可能性は大きく後退したと考える。7月FOMCでの利上げの可能性は依然残されていると考えるが、実際に利上げに踏み切るためには6月分の雇用統計が十分に再加速するほか、個人消費の堅調さ、基調としてのインフレの高まりが経済統計で確認される必要があろう。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。