米国の景気拡大は続くのか

『大和総研調査季報』 2016年4月春季号(Vol.22)掲載

RSS

2016年06月01日

  • ロンドンリサーチセンター シニアエコノミスト(LDN駐在) 橋本 政彦

サマリー

足元の米国製造業の景況感の悪化は、ドル高を主因とした価格下落による売上の押し下げと、海外収益の目減りによって引き起こされている。ドル高、海外経済の減速によって輸出数量は減速しているものの、国内向け出荷の安定的な増加により、製造業の生産や国内収益は景況感ほどに悪い状況にはない。また、業種間の投入・産出構造からすれば、製造業の減速が他の業種に波及するリスクは小さく、経済全体を悪化させる可能性は低い。


家計部門に関しては、経済に占めるサービス業のウエイトが高まることで、以前よりも個人消費と雇用の相互作用が強まり、自律的な拡大が起こりやすくなっている。このため、個人消費は自律的な増加基調が続くとみられ、個人消費を牽引役とした景気拡大が持続する可能性が高い。ただし、個人消費を下振れさせるリスク要因として、逆資産効果による個人消費の下振れには注意が必要である。


FRBは景気拡大が続く中、利上げを続けていくと見込まれるが、これらの経済構造を踏まえた、好循環をサポートする、あるいは阻害しない政策運営が求められよう。


大和総研調査季報 2024年新春号Vol.53

大和総研リサーチ本部が長年にわたる知識と経験の蓄積を結集し、的確な現状分析に基づき、将来展望を踏まえた政策提言を積極的に発信していくとのコンセプトのもと、2011年1月に創刊いたしました。

大和総研調査季報(最新号はこちら)

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。