失業率は悪化も、労働参加率の上昇は好材料

2016年3月米雇用統計:雇用者数は前月差+21.5万人と堅調維持

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2016年04月04日

  • ロンドンリサーチセンター シニアエコノミスト(LDN駐在) 橋本 政彦

サマリー

◆2016年3月の非農業部門雇用者数は前月差+21.5万人増加し、市場予想(Bloomberg調査:同+20.5万人)を上回った。非農業部門雇用者数前月差の3ヵ月移動平均値は+20.9万人と、3ヵ月連続で増加幅が縮小したが、それでも好不調の節目と言われる20万人を上回る水準を維持しており、雇用者数の着実な増加が続いている。


◆3月の失業率は前月から0.1%pt上昇の5.0%となり、2015年5月以来、10ヵ月ぶりに上昇した。内訳を見ると、就業者数は前月差+24.6万人増加したものの、失業者数が同+15.1万人と2ヵ月連続で増加した。非労働力人口は同▲20.6万人減少しており、失業率を押し上げる要因となった。


◆民間部門の平均時給は前月から7セント上昇、前月比+0.3%となり、市場予想(Bloomberg調査:同+0.2%)をわずかに上回った。しかし、前年比で見た時給変化率は+2.3%と前月から変わらず、賃金上昇率の加速を示すほどの強い結果ではない。


◆労働市場は今後も緩やかな改善が続くとみられる。失業率は自然失業率と考えられる水準まで低下していることから、雇用者数の増加ペースが鈍化する可能性に留意が必要だが、企業による労働需要はサービス部門を中心に底堅く、雇用者数の増加基調は続く公算が大きい。また、労働需給がひっ迫する中、賃金を含めた労働環境など、労働市場の質の改善も続くと考えられる。


◆今回の雇用統計結果を踏まえて、FRB(連邦準備制度理事会)による次回の追加利上げは6月という見方に変更はない。FOMC(連邦公開市場委員会)メンバーの間では、政策運営における、インフレ率の重要性が高まっているとみられるが、インフレ率と関連が強い賃金については今回の雇用統計では目立った加速感は見られず、早期の利上げを促すほどの強さはなかった。

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