企業に対する米国の州税制

州によって異なるため州の競争力に大きく影響するが、透明性も重要

RSS

2015年10月27日

  • ニューヨークリサーチセンター 上野 まな美

サマリー

◆米国は連邦制の国であり、各州の立法、行政、司法の仕組みが異なり、税制も各州によって大きく異なる。税制は州の競争力を左右し、経済活動を発展させる重要な要素の一つである。企業にとっても税制は重要であり、税制は経営上の拠点決定に影響する。


◆企業側がビジネスに優しい税制環境がある州へと移転することは自然の流れである。州は企業による投資、研究開発を誘致し、雇用を創出するために、特定の企業に対して法人所得税を低く設定したり、他の税金を軽減するなどの税優遇措置を頻繁に行っている。


◆税優遇措置は、政府高官と企業との間の内密な取引であることがあり、近年、公開監査を求める声が高まっていた。一部の州においては、企業に対する税優遇措置による年金や予算などの問題が問われていることからも、政府会計基準審議会は、税優遇措置の費用公表を義務付けることを承認した。


◆ビジネスに有利な税制は、新規ビジネスを引き付け、雇用を生み出す一定の効果があるとみられる。その半面、特定の企業に過度な税優遇措置を与えると、不公平さをもたらす懸念があることから、透明性が重要である。長期的な州の競争力と経済の健全性を向上させるためには、簡素で実用的かつ透明性の高い税制が必要であり、企業に対する税制を組織的に向上させることが州に求められるであろう。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。