米国の雇用環境の改善は急ブレーキ

5月の雇用統計:非農業雇用者数は6.9万人増、失業率は8.2%に悪化

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2012年06月04日

サマリー

◆5月の非農業雇用者数は前月差6.9万人増と市場予想を大幅に下回り、2ヶ月連続で一ケタ台の低い増加幅にとどまった。過去2ヶ月分が民間サービス部門を中心に4.9万人分下方修正された点も考慮すると非常に悪い内容であったと言えるだろう。財政難に苦しむ政府部門は1.3万人減と引き続き労働市場の足を引っ張っているうえに、注目される民間部門の雇用者数も8.2万人増と市場予想16.4万人増の半分の増加にとどまり、昨年8月以来、9ヶ月ぶりの低水準となった。業種別にみると、3月まで堅調だったレジャー・接客業が2ヶ月連続で減少し、前月に3ヶ月ぶりの増加となった小売も横ばい圏の動き、専門・企業向けサービスは2010年3月以来2年2ヶ月ぶりの減少となった。さらに、建設業が4ヶ月連続で減少したことが響き、生産部門は9ヶ月ぶりにマイナスに転じてしまい、民間部門全体では前月よりも増加ペースが鈍化している。

◆5月の失業率は8.2%と2月以来の高水準となったが、上昇の主因は非労働力人口の減少、つまり職探しを諦めていた人たちが職を求めて労働市場に流入したためであり、ことさらネガティブに捉える必要はないだろう。ただし、解雇等(非自発的離職)を理由にする失業者が5ヶ月ぶりに増加したうえ、より良い条件の職場を見つけようとする自発的離職者も10.6万人減と2ヶ月連続で減少している。さらに、フルタイム従業員の減少や長期失業者の割合が上昇するなど、雇用環境の急減速を表す動きとなっている。

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